心臓血管外科手術 ~冠動脈バイパス術②~

心臓血管外科
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こんばんは、Dr. 空手です。
今回は冠動脈バイパス術第二弾です。

Off pump CABG VS On pump CABG

まずは用語の説明ですが、On pump CABG (ONCAB) とは、人工心肺を用いて心臓を止めた状態でバイパス手術を行うことを言います。
一方でOff pump CABG (OPCAB)とは、人工心肺使わず心臓の拍動下でバイパス手術を行うことを言います。皆さんのイメージ通り、OPCABの方が手術自体の難易度は高く、術中の血行動態管理も難しくなります。

それではこのONCABとOPCAB、どちらの方が成績が良いのでしょうか。
どちらも大きく変わらない」というのが現時点でのエビデンスとして言えることだと思います。

ROOBY試験は初めての大規模多施設試験であり、結果としては死亡・心筋梗塞・再血行再建の複合エンドポイントは術後30日時点では差がなく、術後1年ではOPCAB群で高値でした。また、グラフト本数・1年後のグラフト開存率・5年死亡率でもOPCAB群の成績が悪く、この結果だけ見るとONCABの方が良いのではないかと思えます。
しかし、この試験ではOPCAB群に経験が浅い外科医が含まれていたことが問題となり、この後にも様々な試験が行われました。

その後の試験では、経験豊富な外科医が行うことがほとんど前提になり、CORONARY試験・GOPCABE試験、SMART試験などが行われ、日本でもJOCRI試験が行われました。これらの結果をシンプルに言うと、術後5年前後まではOPCABとONCABの成績は同等であるということです。

では、OPCABの優位性はあるのでしょうか。わざわざ難しい手術をして成績が同じなら全部ONCABでもいいんじゃないのか。そういった意見が聞こえてきそうです。
ちゃんとOPCABにもメリットがあります。高リスク症例(STS score>2.5)・多症例施設・多症例術者でのOPCABでは手術死亡率がより低くなるといった報告や、大動脈ノータッチ法という大動脈遮断やサイドクランプなどの手技を行わないOPCABで脳梗塞や死亡率が低かったという報告もあります。また、腎機能が低下している症例ではOPCAB群で新規血液透析への移行が少なかったとのことです。

以上のことをまとめると、
☆経験豊富な外科医が行うOPCABは、術後5年前後までの生存率・手術死亡・術後合併症・脳梗塞・グラフト開存率
ONCABとがない
☆多症例施設・多症例術者・高リスク群・大動脈ノータッチ法・腎機能低下例ではOPCABが優位

かなと思います。
シンプルですが、このくらいの方がわかりやすくていいんじゃないでしょうか。

そろそろ手技動画もあげていきたいと考えてます。
とりあえず今日のところはここまで。押忍。

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