心臓血管外科手術 ~冠動脈バイパス術①~

勉強
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どうも、Dr. 空手です。
ここ最近気温が下がってきて、そろそろ皆さんの冠動脈が詰まる時期が近づいてきています。
心臓血管外科医の自分としては、冬は忙しくもやりがいのある季節ですね。
今日は心臓血管外科領域のメジャー手術の一つである冠動脈バイパス術(CABG)についてです。

PCI vs CABG

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)とCABGではどちらの方が望ましいのか。色々な研究がなされ、現在も様々な臨床研究が行われています。
2019年に日本の血行再建ガイドラインが改訂されました。
→日本循環器学会ガイドライン掲載ページ (http://www.j-circ.or.jp/guideline/index.htm)
個人的にですが、最近の循環器のガイドラインは色使いが秀逸で、割とサクサクと読める印象にあります。

ガイドラインの転載は禁じられているみたいなので、各々確認してほしいのですが、簡単に言うと、CABGはほとんどの場合で推奨クラスⅠとなっており、エビデンスレベルも高いです。
PCIに関しては徐々に推奨クラスⅠ~Ⅱaが増えてきている印象です。
また、最近はDES(drug eluting stent)と呼ばれる新規のステントによってPCIの成績も安定してきており、CABGに匹敵する成績が期待できることが多くの試験で示されています。

最新のガイドラインでは、治療方針決定に特に重視されているものとして『糖尿病』と『SYNTAXスコア』があります。

『糖尿病(DM)』は言わずもがな、冠動脈疾患のリスク因子ですが、日本では血行再建を要する患者のうち40%以上がDMを合併しており、欧米の20~30%に比べてかなり高率です。
また、冠動脈自体も多枝病変・びまん性病変が多く、臨床で実際にDM患者さんの血管を見ると、確かにびまん性に細くて石灰化も強い印象があります。
PCIはやはり多枝・びまん性病変に弱く、多枝病変のDM例ではCABGの優位性が多くの臨床研究で示されています。ただ、CABG自体もDM例と非DM例では予後に違いがあり、30日死亡率は3%(非DM)、6.7%(DM)、2年死亡率は3.6%(非DM)、7.8%(DM)と2倍近く違う結果となっています。(Herlitz J, et al. Diabetes Care 1996, PMID: 8799622)

『SYNTAXスコア』は病変の解剖学的な複雑性や広がりを表現した指標で、ホームページ(http://www.syntaxscore.com/calculator/start.htm)から項目を入力していくことでSYNTAXスコアが出てきます。
ガイドラインでは0~22を低リスク群、23~32を中等度リスク群、33以上を高リスク群と定義しており、高リスク群になるほどCABGの優位性が上がるとされています。

以上からは、多枝の複雑病変に対する治療法としては、完全血行再建のためにはPCIよりもCABGが優れており、生命予後改善のためにもCABGのほうが有利であると言われています。しかし、現在の高齢者社会を考えると80歳以上の高齢者に対して侵襲度の高いCABGを行うことはやはりリスクが高く、狭心症のコントロール改善として低侵襲のPCIを選択することは非常に理にかなってるのではないでしょうか。

以上、今回はPCI vs CABGで簡単にまとめてみました。
次回はOn pump CABG vs Off pump CABGでやってみましょう。
それではまた次回。押忍。

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