尿路感染症でなぜ嫌気性菌は少ないのか?

感染症
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Ola!

Dr.マクロです!みなさん、いかがお過ごしでしょうか。いよいよ花粉シーズン到来のようです。コロナが流行っている時期の花粉症は本当につらいですね。ますますマスクの重要性が高まってきます。そんなDr.マクロは全く花粉症ではありません。なのでどの程度の辛さか、実体験としてはわからないのです。昔ある友人が「海に溺れながら、目がかゆいんだよ、わかるか!?」と言っており、その辛さは推し量られます。。。。

さて、今回は久々に嫌気性菌を取り上げます。以前の記事で、基本的には尿路感染症では嫌気性菌は考慮しない、と書きました。いずれ理由は取り上げますと言いつつ、年月は過ぎ。。。。なので反省の意味も込めてまとめてみます!以前の尿路感染症嫌気性菌の記事はこちら!

*本記事での嫌気性菌は、偏性嫌気性菌のことです。

嫌気性菌はどこにいる?

嫌気性菌は主に消化管にいます。口腔内にはPeptostreptococcus sppParvimonas sppPrevotella sppなどがいます。また腸内にはBacteroides sppClostridium sppなどがうじゃうじゃとおります。

これらは、例えば腸管内では、E.coliKlebsiellaなどの好気性菌と共存繁栄しているのです。好気性菌は酸素を消費し、嫌気性菌は酸素が消費された後の環境が大好きです。

以上のことからは「嫌気性菌は消化管にいる→泌尿生殖器系にも存在しうる」、ということが分かります。事実、女性の膣炎などの起因菌として嫌気性菌がほとんどで、

  1. Gardnerella vaginalis
  2. Gardnerella mobiluncus
  3. Prevotella sp.

などが有名です。治療はメトロニダゾール膣錠を使用します。

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なぜ尿路感染症は起こさない?

ここからが本題です。この謎を追求してみましたが、特にこれといった研究はありません。ただ成書であるMandell先生の本には以下の記述があります。

Anaerobic bacteria and other fastidious organisms that make up most of the urethral flora generally do not multiply in urine. It has been shown that extremes of osmolality, a high urea concentration, and low pH levels are inhibitory for the growth of some of the bacteria that cause UTI.

嫌気性菌は尿路の常在細菌叢を形成しているが、通常は尿中で増殖することはない。極端に高い浸透圧、尿素が高濃度であること、pHが低いことなどが発育を阻害している。

Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases1 967pより

つまり尿中環境は、嫌気性菌にとって非常に住みづらいのですね。あと単純に、尿流という物理的障壁もあると思います。

なぜ膣炎は起こしうるのかというと、

  • 膣液には尿素などが少ない
  • 尿流ほどの物理的障壁もない
  • 普段はデーデルライン膣桿菌(Lactobacillus sp)がpHを低く(酸性に)保っているのですが、ストレス、喫煙や抗菌薬使用によってデーデルライン膣桿菌が死滅して、pHが上昇することがある

などが原因となります。尿路とは環境がガラッと違いますね!

本当に、尿路感染症を起こさないのか?

実は嫌気性菌が尿路感染症を起こすことは稀ですがあります。それは以下のような状況です。

  • 腸管または生殖器と、尿路に交通がある場合

です。具体的には、S状結腸膀胱瘻、膣膀胱瘻などです。言い換えると、嫌気性菌が常在する場所と尿路が、何らかの原因で交通してしまった場合には嫌気性菌による尿路感染症は起こりうるのです。そのような背景のある患者様の尿路感染症を見た場合には、経験的治療の段階で嫌気性菌カバーを考慮する必要があります!

今日はここまでです。皆様の疑問は解決しましたか?意外と教えてくれるようで、誰も好きっと教えてくれないところですので、ぜひ参考にしてください。さすがマンデル先生!(笑)

Adios!

参考文献

  • Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases1
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