こんにちは、Dr.ほほえみです。
夏が始まったと思ったらRSウイルス感染症の方が増えてきました。小児科なら必ずと言ってもいいほど出会う疾患です。今回は少し掘り下げてみましょう!
RSウイルスとは?
RSウイルスとはRespiratory syncytial virus(以下、RSV)の略で、直訳すると呼吸器合胞体ウイルスですが、「何それ?」ってなりますよね。簡単に言うと、RSVはマイナス一本鎖RNAウイルスでエンベロープと呼ばれる外膜で覆われていて、ウイルスが細胞に感染する際にエンベロープと細胞膜とが融合して特徴的な合胞体を形成することに由来します。
RSVの流行は、日本では冬をピークに夏から春にかけてみられます。あれ?夏から春って、夏→秋→冬→春…つまり一年中でくわすウイルスなのです。近年では夏に地域的な小流行が散見されますが、原因はわかっていません。ちなみに熱帯地方では雨季が流行時期と言われていますが、やはり通年性にみられることが多いそうです。
病態
1歳までに70%、2歳までにほとんどの乳幼児が罹患するといわれています。潜伏期間は3-5日間で、ウイルス排出期間は1-2週間程度です。症状は、風邪の症状が強いversionと考えてもらうとわかりやすいです。普通の風邪より、熱が続いたり、咳がひどかったり、喘鳴(いわゆるゼイゼイする)を認めたりします。またウイルスの特徴として、罹患してから日が経つにつれ症状が増悪していき5-7日目くらいにピークを迎え、ピークを過ぎると徐々に改善するという経過を認めます。全体としては2週間くらい症状が続くと考えてよいでしょう。ただ年長児がかかっても普通の風邪に終わってしまうケースが多いです。
気を付けるポイントとして、1歳未満(特に生後6か月)では重症化しやすく、典型的な風邪症状ではなく、多呼吸や陥没呼吸などの努力呼吸や無呼吸発作を起こすこともあります。また、喘鳴や努力呼吸がなくても酸素化低下を認める場合もあるので注意が必要です。
検査所見
血液検査では、白血球やCRPなどの炎症反応がそれほど上昇しないのが特徴です。ただ細菌性肺炎合併例では炎症反応が上昇するのでその限りではありません。
胸部単純写真では、肺の過膨張所見や無気肺、気管支壁肥厚などの所見を認めます。浸潤影を認める場合は肺炎合併が考えられます。
診断
一般的に使用されているのはイムノクロマト法によりウイルス抗原を検出する迅速診断キットです。綿棒で鼻咽頭ぬぐい液を採取して検査するもので15分程度で結果がわかります。現在、複数の診断キットが市販されており、特異度は高い(ほぼ100%)ですが、感度はウイルス量に左右されるため30-80%程度とまちまちです。
感度・特異度ともに高いのは、ウイルス核酸を検出するRT-PCR法ですが、分子生物学的検査設備が必要であり、大学や研究所レベルでないと検査は難しいでしょう。
以上、RSVの病態・診断編をお送りしました。よく出会う疾患だからこそ、経験論で語るのではなく、しっかりとした知識を持つ意識が大事だと思います。次回は治療や予防法などに焦点を当てたいと思います!何かわからない点やこういう症状に難渋したなどあればコメントいただけると幸いです。
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