こんにちは、Dr.マクロです!ブログの投稿はなれないですが、できる限りわかりやすく書いていきますのでよろしくおねがいしま!今回は、意外と理解できているようで理解できていないInoculum効果に関してです!
Inoculumってどういう意味?
そもそも、Inoculumという言葉を知らないと意味不明に終わってしまうので、単語の意味から整理しましょう。Inoculumとは、「接種」という意味です。ん?ますます意味がわからないぞ、となるかもしれませんね。今はとりあえず、そういう意味なんだと覚えていてください。
Inoculum効果とは?
では本題のInoculum効果とは何でしょうか。最初に答えを言いますと、次のようになります。
「Inoculum効果とは、In vitro(要は検査室での感受性試験)において最初にまく菌量によって最小発育阻止濃度:Minimum Inhibitory Concentration(以下、当ブログではMIC)に違いが出る現象」のことです。もっと簡単にいうと「菌量が多いほど、MICが上昇する現象」です。本来なら、菌量が多くても少なくても、MICは同じであってほしいですよね。でも菌量が多ければ多いほどMICが上昇してしまう現象が実は、思っている以上に起こると言われています。言葉としては「Inoculum Size Effect」とするのがよりわかりやすいでしょうか。
臨床においてどのように使う?
では臨床では、Inoculum効果はどのように重要なのでしょうか。それは特に、現在の抗菌薬治療がうまく行かないときに考える場合、と感染性心内膜炎(Infective Endocarditis、以下IE)や肝膿瘍、骨髄炎などのHigh inocululmな疾患は診断時点で検討する必要があります。検査室の感受性試験では、決まった一定の菌量(接種量)を使用します(これを、Standardised Inoculumと表現したりします)。その検査でMICが低くても、体内ではその接種量よりも多い菌量がいて、実は体内ではもっとMICが高くて効果が十分ではない可能性があるのです。実際にIn vitroで接種量をHigh inoculumにして検査するとMICが上昇する現象が確認されているんですね。そういった場合は、Inoculum効果を受けにくい抗菌薬に変更を検討しないといけない、という判断になるわけです。
例えば、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症
既に医師の方々なら一度は出くわしたことあるのではないでしょうか。学生や研修医で経験のない人もこれを機会に学んでみてください。別記事にMSSA菌血症のWork Upの記事を作成します。本題に戻って、MSSA菌血症の抗菌薬治療はセファゾリン(CEZ)がGold standardです。でも、実はCEZはInoculum効果を受けやすい抗菌薬なのです。よって、とある観察研究では実際にMSSAのCEZに対するInoculum効果が確認されています[Wang SK, et al. Antimicrob Agents Chemother 2018; 62.]。しかし、実際の臨床効果(例えば死亡率)に差があるかどうかはさらなる研究が必要です。あくまで、In vitroでの話ですからね。In vivo(体内)でMICに差があるかどうかは調べることができないので、死亡率などのOutcomeに落とし込む必要がありますが、まだ良質な研究はなさそうです。今年の2月にCLSI( Clinical and Laboratory Standards Institute )も同様の情報を発信しています( https://clsi.org/about/blog/ast-news-update-2019-hot-topic/ )。セフトリアキソン(CTRX)はこの効果を受けにくいので、CTRXを選択肢ほうが良いのではという、考えが徐々に提唱されています。個人的なエビデンスもない意見とすると、CEZの供給不足問題でMSSA菌血症をCTRXで治療することも増えてきましたが、治療失敗はあまり経験しませんね。あくまで個人の少ない臨床経験で、ですが。
以上、如何でしたか。Inoculum効果がより身近なものになりましたか?ここがわからない、こういう場合はどうなの?など意見ありましたらコメントお願いします。
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