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今回は、VZVまとめの第2弾としてワクチンと帯状疱疹後神経痛(Postherpetic Neuralgia,PHN)に関してまとめます。
ワクチン
VZVワクチンは小児において、定期接種となっています。今回は、成人に対するワクチンを説明します。特徴をまとめると、
- 乾燥弱毒生ワクチン
- 対象:50歳以上
- 推奨:任意
- 効果:帯状疱疹の発症、ならびにPHNの頻度を下げる(なんと50%以上も!)[1]
- 効果持続:3-11年程度で減弱[2]
となります。ここで注目すべきは、生ワクチンであることと効果です。
生ワクチンなので、つまりはある意味ウイルスを直接投与するようなものです。なので、既に細胞性免疫低下患者では禁忌となります(米国には不活化ワクチンがあり、そちらは免疫抑制患者でも接種可能)。
効果はすごくて、発症に加えてPHNもリスク低下させてしまうのです[1]。それぞれのRisk reductionは51.3%、66.5%でした。
なので、50歳以上の方々は広く適応となります。上記の結果からは、もはや水痘の既往があってもなくても、また帯状疱疹を発症した後でも前でも、Benefitがありますね。実際にはUpToDateの記載でも、水痘の後などは考慮せず、接種を推奨するとなっております。ただし、日本には不活化ワクチンは承認されていないので、細胞性免疫抑制状態の患者さんがVZVに暴露された場合には、水痘帯状疱疹免疫グロブリンを使用を考慮します。
医療従事者の方々は職場で、抗体価を測定していますよね。
帯状疱疹後神経痛:PHN
これ、帯状疱疹の合併症で最も多く、かつ苦しい合併症です。
「帯状疱疹罹患部位に一致して1ヶ月以上継続する疼痛」
と定義されています。疼痛はピリピリ程度から激痛まで様々です。発症率やどのくらい継続するかは、少数の研究があります。
- 帯状疱疹後0,3、6、9、12ヶ月後に何%の人が疼痛を感じているかを調べると、それぞれ、80、12、9、7、6%であった[3]
- 65歳以上のPHN患者に質問紙法で質問してみると、平均3.3年間の罹病期間であった.[4]
ということで、何年間も苦しむことになるので予防や治療が必要なんですね。
では、早速治療に入りましょう。あくまで対症療法しかなく、鎮痛を行います。問題なのは、治療に何を使用するか?です。我々が使用できる有用な選択肢を紹介します。
- 軽症~中等症
- カプサイシン軟膏、リドカイン軟膏
- アセトアミノフェン
- 三環系抗うつ薬(TCA):アミトリプチン、デュロキセチン
- 中等症~重症
- プレガバリン、ガバペンチン
- 三環系抗うつ薬(TCA):アミトリプチン、デュロキセチン
- 弱オピオイド:トラマドール
- 重症
- 強オピオイド
特に、青文字の3つはSystematic reviewでプラセボに対して優位性が示されています[5, 6, 7]。特に中等症~重症のPHNに対しては、プレガバリンやガバペンチンは第1選択肢です。奏功する患者さんも多いです。
もっとマイルドな症状であれば、アミトリプチンなどのTCAも使用します。プレガバリンなどに慎重にTCAを重ねることもあります。
読者の皆さんの中には、「え??カプサイシンって唐辛子?!」と思った方も多いでしょう。そう、あの唐辛子の中のカプサイシンです。実は真面目に研究されており、PHNの症状緩和につながって、かつ外用薬なので副作用はなかったという報告もあります[8].リドカイン外用に関しては、Cochrane reviewで効果は不明となっていますが、副作用はほとんどないので意外と使える武器の一つです。
プレガバリン、ガバペンチン
神経障害性疼痛に対する有効な薬剤です。リリカやガバペンというと馴染み深いでしょうか。これらの作用機序は、
「シナプス終末のCaチャネルのα2δサブユニットに結合してしまうことで、シナプス終末からの興奮性神経伝達物質の遊離抑制」
と説明されます。ガバペンに関しては、脳内GABA量を増加させるという機序もあるようです。いずれにしても、ギンギンと興奮して疼痛を引き起こしている神経の興奮をなだめる、といったイメージで効果があります。
この作用機序から、どんな副作用が想定できますか??興奮している神経を鎮静させる。。。。そう!眠くなるんです、そしてふらつきます。これは高齢者にとっては非常に危ない副作用であり、ERにもこれらが原因と考えられる転倒や失神で運ばれてくる方々が大勢います。
それらを防ぐために、必ず腎機能に合わせた用量調整をしましょう。添付文書には詳細な調整用量と最大容量が書いてあるので、きちんと守って使いましょうね。
最後にもう一つだけ、注意したいことがプレガバリンにあります。それは、
「急に中止すると離脱症状が起こりうる」
ことです。これは添付文書に書いてあるにも関わらず、あまり知られていないので注意喚起します。頭痛、抑うつ症状、焦燥感などが起こるとされています。1週間程度かけて徐々に減らしていく必要がありますので、くれぐれも注意してください!ただ、かなり高用量でないと起きづらいとされています。
マクロ流PHN診療
私は以下の流れで治療することが多いです。
- 軽症
- 外用薬を試しつつ、アセトアミノフェン頓用使用
- アセトアミノフェンで効果あれば定期内服へ
- それで難しいなら、TCA導入
- 中等症~重症
- プレガバリンやガバペンチン導入(腎機能に応じて増量)+アセトアミノフェン定期内服
- 上記で難しければTCA導入
- 更に難しければ、アセトアミノフェン中止してトラムセット導入
さあ、長くなってしまったのでこのくらいにしておきましょう。これで皆さんは、VZVの治療や予防、PHNの治療まで出来るようになりました。ぜひ、このブログで学んだことを、あたかも自分で調べたかのように後輩や友人に説明してみてください。まどろむようならマダマダです。AnkiやOnenoteなど駆使して習熟しましょう!
Adios!
引用文献
- N Engl J Med. 2005 Jun 2;352(22):2271-84.
- Clin Ther. 2015 Nov 1;37(11):2388-97.
- Pain. 2012 Feb;153(2):342-9.
- J Pain. 2005 Jun;6(6):356-63.
- PLoS Med. 2005 Jul;2(7):e164.
- Ann Pharmacother. 2011 Dec;45(12):1483-90.
- Lancet Neurol. 2015 Feb;14(2):162-73.
- J Am Acad Dermatol. 1989 Aug;21(2 Pt 1):265-70.
- Cochrane Database Syst Rev. 2007 Apr 18;(2):CD004846.
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