抗菌薬マスターシリーズ~ST合剤~

勉強
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どうも皆さま、週末いかがお過ごしですか?関東は台風が接近しております。関東はそんなに台風直撃するイメージなかったのですが、最近はよくありますよね。こんな日は皆さん外出を控えて家でゆっくり休みましょうね!

そう!そして家ですることは、「トリッキー先生の処方箋」を服用して医学知識を補っていきましょう!

今回は、ST合剤のまとめです!ST合剤は臨床上非常に重要かつ、副作用などで思わぬ落とし穴もありますのでここでしっかりとまとめておきましょうね。

History

1935年:ドイツのゲルハルト・ドーマク博士はプロントジルという染料に抗マラリア作用があることを発見し、娘の敗血症治療に用いたそうです。このプロントジルの有効成分こそサルファだったのです。後にドーマク博士はこの発見でノーベル医学生理学賞を受賞しました。

第2次世界対戦において、ドイツ軍は兵士の傷口にサルファ剤を振りかけることで、ガス壊疽を激減させることに成功し、太平洋戦争において連合軍はサルファ剤を大量に兵士に携行させることで赤痢による死者を2人しか出さなかったという話もあります。
その後、トリメトプリムとの合剤にすることで効果が飛躍的に上昇することが判明し、現在でも抗菌薬において重要な位置を占めています。

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スペクトラム&使いドコロ

前回のカルバペネム系同様に非常にBroad spectrumな抗菌薬なので、無効な菌と使いドコロを抑えましょう!常に覚える量は最小限!これ鉄則です!

  • 緑膿菌
  • 腸球菌
  • 偏性嫌気性菌
  • 細胞内寄生菌(Legionellaのみ例外で有効)

これも覚えやすい?ゴロを作りましたので、紹介します。

ミドリ(緑膿菌)ムシは、超(腸球菌)嫌(嫌気性菌)

次に使いドコロですね!正直、スペクトラムや副作用の管理ができれば場面でも使ってよいのですが、特にここは!っていう適応のみ取り上げます。

  • ニューモシスチス・カリニ肺炎の予防と治療
  • Stenotrophomonas maltophiliaの治療
  • MSSA&MRSA(Hospital-acquiredもCommunity-acquiredも)
  • 赤痢菌、旅行者下痢症、呼吸器感染症、尿路感染症 etc…..

特に最初の3つは重要です!ST合剤の最大の功績は、PCPの予防が可能となったことでしょう。これにより、HIVキャリアの患者様方のPCP発症を劇的に減らしました。ペンタジンやアトバコンも用いられますが、あくまでST合剤に忍容性がない場合のみで、ST合剤に勝っているわけではありません。

またMRSA感染症を内服へ切り替える際の有力な候補です。また別記事で抗MRSA薬としてまとめますが、ST合剤で骨髄炎やIEの治療期間を全うするなんてこともあるでしょう。

重要!副作用マスター!

さて、今までのことを見ると、なんて便利な薬なんだ!神の薬じゃないか!なんて思っちゃいますが、実は副作用も多い薬なんです。それをうまく付き合えれば大変に便利な薬剤なので起こりうる副作用をまとめて、適切に患者説明に使用しましょう。

  • 皮疹:光線過敏症、稀にStevens-Johnson症候群やTEN
  • 消化器症状:これでGive upする人もいるくらいです。
  • 血球減少:3系統いずれも起こりうる
  • 見かけのCr上昇:ST合剤が尿細管でのCr分泌を阻害するため、ベースのCrから10%前後の上昇が起こる.そのため10%前後であれば慌てず経過観察
  • 腎毒性:AKIに要注意!油断しているとAINやATNが生じうる.高K血症も起こる。ACE阻害薬やアルドステロン拮抗薬などの薬剤と同時に開始しない!

特にAKIに関しては、「Cr上昇?見かけ上だよ☆彡」なんて油断していると、AKIだったりするのでちゃーんとAKIのワークアップをしましょう。また消化器症状も強く出る人は意外と多くて、それで内服を途中でやめちゃう人もいます。ERなんかでST合剤を膀胱炎へ処方する人も多いと思いますが、可能ならば内科へつなげたほうが良いです。副作用のマネジメントをおざなりにして処方するべからずですね。

早速副作用のゴロを覚えましょう!

★ABCD!

  • A:allergy, Acidosis,AKI
  • B:Bone marrow supression、Bowel
  • C:Cr上昇
  • D:Dermatologic disorder

ABCDのゴロ多すぎ!って思われるかもしれませんが、マクロをこれで覚えてしまったのでお許しください。。。

投与設計

実は、ST合剤の投与用量は、すこーしだけ複雑です。その名も「トリメトプリム換算」ということをします。でも、これ知っていれば非常に単純なのでこの際にマスターしてください。

ST合剤1錠=バクトラミン注1アンプル=スルファメゾキサゾール400mg:トリメトプリム80mgで構成されています。そして、ST合剤の投与用量はトリメトプリムの用量で計算するのです!早速具体例を見てみましょう。

Ex)あなたがPCPの治療をしたい時、サンフォードガイドを参照すると15-20mg/kg/dayと書いてあります。体重50kgの患者さんであれば、15-20×50kg=750ー1000mg/dayとなります。この1000mgというのはトリメトプリムの用量なので、80mgで割ってみると、

1000÷80=約12錠

となるので、12錠もしくは12A/day投与すればよいのです。これを通常は分2-3で投与します。知ってしまえば簡単ですよね?

ちなみにPCP予防はもっと簡単です。1日1錠投与すればOKです。

治療も予防も腎機能調節を忘れないように!

おまけ

ここはおまけですが、日本人にとって意外と重要な事実があります。それは、抗SS-A抗体保有者はST合剤の副作用が出やすいのでは?という研究(Mod Rheumatol. 2016 Jul;26(4):557-61.)があります。

そして、日本人はSS-A抗体保有率が高いのです。。。ST合剤は大変便利な薬ではあります。しかしマネジメントすべき副作用も多い薬なのですね。実際に内服するのは患者さんです。患者さんの身になれば、必ず何らかの形でフォローできるようにしておくのがよいでしょう。

以上、如何だったでしょうか?私は抗菌薬の中でST合剤がとても好きです。なぜなら使いドコロや副作用のマネジメントが内科の腕の見せ所な気がするからです。これを気にあなたも、Dr.STになりませんか?Adios!

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