みなさん、Ola!3連休明けでブルーですか?それともパープルですか?私は、オレンジです!
さて、今回は少し久しぶりの細菌シリーズで肺炎球菌です。正式にはStreptococcus pneumoniae(以下、pneumococcus略)です。言わずとしれた市中肺炎の起因菌No.1であり、臨床でもよく目にしますよね。でも、PRSPや尿中抗原、ワクチンの話題など意外とPitfallもあるのでこれを機にまとめておきます。あくまで臨床で必要な知識のみまとめますので、以下のような目次となります!
Agenda
- Gram染色の分類&染色像
- よく起こす感染症
- 抗菌薬とPRSP
- 尿中肺炎球菌抗原
- ワクチン
Gram染色の分類&染色像
下の写真を見れば一目瞭然ですが、好気性グラム陽性双球菌です。これは良質な喀痰を適切に染めればはっきりと分かるので覚えやすいですし、実際に自分で染めて見たことある方も多いのではないでしょうか。下の写真では右上や左上に貪食像がありますね。
そしてよ~~くみると菌体の周りが透明に抜けているのが見えますか?感じますか?これが莢膜:Capsuleなんです。前回の髄膜炎菌のときも記載しましたね。
よく起こす感染症
これは言わずもがな肺炎!なのですが、これは次のように分けましょう!
- 非髄膜炎感染症
- 結膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、蜂窩織炎
- 肺炎(菌血症を伴う)、漿膜炎、関節炎、菌血症、IE
- 髄膜炎
「いや、これ分けなくてもいいでしょ。。。。」って思った読者の方々、実はこれは抗菌薬とPRSPの項目で効いてくるので少々お待ち下さいね。
また青太文字で書いた感染症のことをなんと呼ぶかご存知ですか?ずばり「侵襲性肺炎球菌感染症:Invasive Penumococcal Disease(IPD)」と呼びます。簡単に言うと、鼻腔や咽頭のような肺炎球菌が定着する場所以外に感染症を起こしたものをIPDといいます。これは実は届け出の対象で診断したら7日以内の届け出が必要です(血液か髄液から培養陽性、PCR陽性、または尿中抗原陽性が必要)。
抗菌薬とPRSP
さて使用する抗菌薬は何でしょうか。肺炎球菌は重症ないかつい印象があるかと思いますが、実はペニシリンGやアンピシリンがよーーーく効きます。但し感受性があれば、、、です。ここで重要になるのは、「PCGの感受性があるかどうか」、「髄膜炎があるかどうか」、なんです。表が最もわかりやすいので下表を参照ください。
要は、髄膜炎かどうか耐性華道家の基準が変わるのです。当然、髄膜炎のほうが厳しい基準です。PCGに耐性の肺炎球菌のことを、
Penicillin-Resistant Streptococcus Pneumoniae:PRSP
と呼ぶのですね。その場合の抗菌薬選択は第3世代セフェム(セフトリアキソンかセフォタキシムになります)。しかし、近年は3世代セフェムにも耐性が多くなってきている傾向にあり、上記のようにセフトリアキソン耐性のブレークポイントもCLSIが明記しています。セフトリアキソン耐性の場合に、使用するのはバンコマイシンとなります。
- PCG感受性あればPCG!
- PRSPであれば第3世代セフェム!
- 第3世代セフェムも耐性であれば、バンコマイシン!
- 耐性かどうかの基準は髄膜炎どうかで違う!
とまとめておきましょう!なので市中肺炎の経験的治療で、セフトリアキソンを選びがちな理由はこれもあると考えます。
尿中肺炎球菌抗原
皆さんもERや外来でオーダーしたことあると思います。この検査の精度を知っていますか?オーダーして評価するためには検査の精度を知っておかないといけないですね。
いくつかの研究があるのですが、いずれもCAPを対象として喀痰培養検査の結果と尿中抗原の検査を比較しています[1,2,3]。1つは免疫不全患者、2つは免疫不全に限らず検討しています。いずれでも、感度:70%前後、特異度:90%以上でした。つまり検査陽性であれば肺炎球菌性肺炎が確からしいということですね。また菌血症がある場合には、感度はさらに上昇するとされます。
一方で、IDSA Guideline[4]では下記のような高リスク患者に限って検査するように推奨しています。
- ICU入室症例
- 外来での治療失敗
- 白血球減少
- アルコール依存患者
- 脾摘患者
- 胸水貯留
さて、今日はここまでにしましょう。長くなりましたからね、ワクチンの話はそれだけで少し長くなるので別記事にまとめます。でも、これで少しは肺炎球菌に慣れ親しめたのではないでしょうか。ぜひSanfordやJohns-Hopkinsの記載も勉強してみてくださいね!Adios!
引用文献
- Arch Intern Med. 2011 Jan 24;171(2):166-72. PMID: 20876397
- Clin Infect Dis. 2003 Feb 1;36(3):286-92. PMID: 12539069
- Clin Infect Dis. 2004 Jan 15;38(2):222-6. PMID: 14699454
- Clin Infect Dis. 2007 Mar 1;44 PMID: 17278083
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