どうも、医療界のジャンヌ・ダルクことDr.マクロです。今回から、マクロ内科学シリーズを始めます。これは、病気ごとにまとめたシリーズで、シリーズ名に他意はありません笑。
記念すべき第1回目は意外と落とし穴が多い、蜂窩織炎:Cellulitisです!さっそくいってみましょう!
蜂窩織炎のまとめ所!
蜂窩織炎は単純そうで、意外と落とし穴が多くLearning pointが多いんです!なので重要なポイントをメインにまとめますね!あくまで、臨床に即してやりましょう!
- 診断
- 原因菌と抗菌薬
- 培養をどうするか
- 治療期間
特に上2つが重要です!
診断~壊死性筋膜炎との鑑別~
蜂窩織炎自体の診断基準はなく、臨床判断となります。つまり、医師の判断が診断となるのです。なのでここは経験ですね。そして蜂窩織炎の診断で常に問題となるのが、壊死性筋膜炎(壊死性軟部組織感染症:Necrotizing Soft Tissue Infection、NSTI)との鑑別です。なぜなら、蜂窩織炎はゆっくり見ることのできる比較的軽症の感染症ですが、NSTIとなった途端に一刻を争う緊急疾患に早変わりするのです。速やかに外科にコンサルトし洗浄・デブリードメントして頂く必要があります。
では、どうやって鑑別すればよいのでしょうか。以下の3点が重要です!
- 経過と臨床所見
- 血液検査
- 画像所見
まずは経過と臨床所見です。特に経過が重要で、数日単位で進むのが蜂窩織炎です。NSTIは時間単位で進行し増悪します。この時間間隔の違いがかなり重要で、時間経過で悪くなっていることが判明したらもうNSTIを念頭に診療しましょう。
次に所見です。以下の所見が出た場合は、NSTIを考える必要があります。
- 感覚障害
- 水疱形成
- 皮膚所見よりも広い範囲と程度の疼痛
- 握雪感
筋膜・筋層での進行が早く、その直上の皮下組織や真皮に波及し皮膚所見として出るより早く水平方向に広がっているんですね。握雪感は有名ですが、ないからと言ってNSTIではないとは言えないので注意しましょう!
さて、血液検査はどうでしょうか?どの項目を見ていますか?実は、血液検査の項目のみを含んだNSTIの予測スコアがあります。その名も、「LRINECスコア」!これは聞いたことある人も多いのではないでしょうか?[1]。項目内容は元文献を参照してください。項目のみでいうと、CRP、WBC、ヘモグロビン、Na、Cr、血糖の6項目を評価します。注意すべきは後ろ向きコホート研究なのですが、NSTI群の対照群は重症蜂窩織炎もしくは膿瘍形成した蜂窩織炎なのです。つまり、軽症に見える蜂窩織炎に適応できるかどうかは慎重に対応すべきです。その後、2017年にSystematic reviewが出ており、NSTI群の平均点数が6.06点であったのに対して、非NSTI群は2.45点であり、ROC曲線のAUCは0.927と非常に高い精度でした。
最後に画像検査です。よく撮影されるのは、造影CTでしょうか。これはガス産生の有無や膿瘍形成の評価ができます。でもそれらは、エコーでも評価可能です。なので、蜂窩織炎の患者さんにはエコーを当てる習慣をつけると良いでしょう。またCT撮影にはもう一つ、外科の先生にデブリードメントを依頼するときに切開範囲を決める際に重要です。炎症が波及していそうな部分より、更に広範囲に切開し洗浄する必要があるので、その範囲を決める意味で画像評価は重要ですね。
原因菌と抗菌薬
蜂窩織炎の原因菌といえばSS(ダブルエスと勝手に読んでます)です!これはStreptococcusとStaphylococcusの頭文字を取っています。2つの中でも、Streptococcusの方が多いです。またStaphylococcusの中ではaureus,Streptococcusの中ではやはりA群β溶血性連鎖球菌が最多です[3]。また以下の特徴を覚えておくと、起因菌を特定するのに役立ちますよ。
- β溶連菌→リンパ管炎を生じやすい
- S.aureus→膿瘍を作りやすい
そして、蜂窩織炎は非常に培養が生にくいため、経験的治療がそのまま最後まで継続することになります。なので最初からこの2大起因菌をカバーするように抗菌薬を選びます。
- セファレキシン or セファクロル
- クリンダマイシン
- アモキシシリン/クラブラン酸
内服なら第1世代セフェム系のセファレキシンやセファクロルを選びます。Bioavailabilityもよく、SSにも有効です。もしくはAMPC/CVAも使用可能です(使用するならオグサワ、オグパセにしましょうね)。詳細はペニシリン系とセフェム系の記事もどうぞ!ちなみに、他院でフロモックス(セフカペン・ピボキシル)やバナン(セフポドキシム・プロキセチル)を処方されて治療失敗した症例をよく見ます。失敗する原因としては、これら3世代セフェム系のBioavailabilityの低さ、GPCへの活性が1世代セフェム内服よりも劣ることが挙げられます(他にも患肢安静が保てていなかった、なども勿論ありえますね)。わざわざBioavalabilityの低く,不要なGNRカバーもある3世代セフェム内服を使用する理由はないので、皆さん気をつけましょう!
- セファゾリン
- アンピシリン
- ペニシリン
- セフトリアキソン
- クリンダマイシン
点滴であれば、上記の内服をそのまま点滴にしてセファゾリンと言いたいところですが、昨今の供給不足問題でなかなか蜂窩織炎では使いにくい世の中になってしまいましたね。そもそも点滴にするのは、バイタルサインが不安定であったり、全身状態が悪い時です。それ以外で、本人はケロッとしているけど足は痛い!みたいなパターンは内服のままで外来治療可能です。
MSSAに対しては、PCGやABPCは耐性の事が多いので、経験的治療では使いにくいんじゃないの?と思われるかもしれません。ただ、Streptococcusのほうが頻度が多いことと、膿瘍を作っているかどうか、リンパ管炎を起こしているかなど分かれば、StreptococcusかStaphylococcusか検討つくのでABPCやPCGで攻めるのもありでしょう!
まとめ
今日は長くなったので、培養と治療期間に関しては次の記事にしましょう!今日覚えておいてほしいことをまとめます!
- 壊死性筋膜炎との鑑別ポイント
- 起因菌はSS(ダブルエス)
- Streptococcus→リンパ管炎、Staphylococcus→膿瘍作りやすい
- 抗菌薬はSSをカバー!(おすすめは内服でも点滴でも第1世代セフェム系)
参考文献
1. Crit Care Med. 2004 Jul;32(7):1535-41.
2. The Annals of The Royal College of Surgeons of England 2017;99:341-6.
3. Clin Infect Dis. 2014 Jul 15;59(2):147-59.
4. JAMA. 2016 Jul 19;316(3):325-37.
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