抗菌薬マスターシリーズ~セフェム系~

勉強
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 みなさん、週末いかがお過ごしでしょうか?歩く培地ことDr.マクロです!今回は、セフェム系です!ペニシリン系とセフェム系をマスターしてしまうと、もう抗菌薬の80%以上は掌握したと言っても過言ではありませんよ!

抗菌薬マスターシリーズとは・・・主に研修医と専攻医を対象に、抗菌薬の歴史を紐解きながら特徴をマスターしようという企画です!

History

1948年:イタリア人のDr.Giuseppe Brotzu(Google検索をかけてみてください、顕微鏡を覗き込む姿が写真として残っています)が、Cephalosporium属(現 Acremonium属)という真菌の培養液から抽出しました。 実にペニシリンの発見から19年、実用化から6年目の出来事だったそうです。 中でも最も安定していた分画のみを抽出して、セファロスポリンCと名付けました。以降は、この物質を化学修飾することで開発が進んでいき今に至ります。

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セフェムのまとめ方

いろんな教科書にいろんなまとめ方が書いておりますね。いずれも共通するのは、世代ごとに分けていく方法がメインですね。1-4世代に分けて整理する方法。これは非常にわかりやすいのですが、セフェム系の、特に静注用の薬剤の整理に多少の無理があります。なので、私は以下のポイントに注意してセフェム系をまとめています。

  • セフェム系に共通の特徴
  • 世代ごとにきれいに整理できるグループ、偏性嫌気性菌カバーのあるグループ、GPCにはほぼ向こうで緑膿菌含むGNRに特化したグループ、の3つに分ける
  • 髄液移行性

以上3つに分けて整理しましょう!

セフェムに共通の特徴

これはシンプルです。

  • 腸球菌属(Enterococcus spp)
  • リステリア属

の2つの菌種には全て無効です。4世代のセフェピムでさえも無効です!ではそれぞれに効果のある抗菌薬は何でしょう?第1回目の記事を思い出してください。。。。。。。。。そう!アンピシリンでしたね(腸球菌の中ではEnterococcus faecalisのみ)!1回目の記事も復習しておきましょうね!  https://trkpresc.com/%e6%8a%97%e8%8f%8c%e8%96%ac%e3%83%9e%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%ba%ef%bd%9e%e3%83%9a%e3%83%8b%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%b3%e7%b3%bb%ef%bd%9e

髄液移行性

基本的には、3世代以降のセフェム系が髄液移行性があります。具体的には後述するセフトリアキソン、セフォタキシム、セフェピムですね。これより若い世代では移行性はないので髄膜炎には使用しないように。なので、細菌性髄膜炎の経験的治療ではセフトリアキソンを使用するんですね。

3つのグループ

上記した3つのグループに分けると、スペクトラムに迷いが無くなります。まずは例外から押さえましょう。

偏性嫌気性菌に効果のあるグループは、ずばりセフメタゾールです。これは、GPC(MSSAもふくむ)、GNR(E.coli, Klebsiella, Proteus, H.Influenzae, M. catarrhalis )、偏性嫌気性菌(Bacteroides spp)などに活性があります。またESBL産生菌に対しても活性があり、軽症尿路感染症などでは使用可能である可能性が示唆されています。 Int J Infect Dis. 2013 Mar;17(3):e159-63.

緑膿菌含むGNRに特化したグループは、セフタジジムです。あまり使用経験がないかですね。とにかく、GNR専門家!それがセフタジジムのイメージです。世代で分けると3世代なのですが、緑膿菌にも活性があるため例外として分けておくとよいです。ESBLや、AmpCなどのβラクタマーゼには分解されてしまうので無効です。使用場面は、腹膜透析腹膜炎(いわゆるPD腹膜炎)などでバンコマイシンとともに用いられることや、実はFNの経験的治療として推奨があります(これはFNの経験的治療が緑膿菌含むGNRカバーをメインに選ばれているからでしょう)。

あとの抗菌薬は世代でスッキリ理解できます。

  • 1世代・・・セファゾリン(CEZ)
  • 2世代・・・セフォチアム(CTM)
  • 3世代・・・セフトリアキソン(CTRX)、セフォタキシム(CTX)
  • 4世代・・・セフェピム(CFPM)

つまり1世代はGPCに強く、世代を経るごとにGNRカバーが広がるというイメージです。そして緑膿菌カバーは4世代以降にしかありません(つまり日本ではセフェピムのみ)。勘違いしがちなのは、3世代以降のセフェムはMSSAに効果があります。なので、セフトリアキソンやセフェピム投与していて、まだGPCの名前が判明していない場合もMSSAであればカバーは出来ています。セファゾリンとセフトリアキソンのInoculum効果に関する議論は別の記事に書いていますので参照ください!

CTRXだけ青太文字にしたのは、この薬剤だけ胆汁排泄型なのです。なので腎機能による調整は不要で使用しやすいのですが、独特の副作用があります。それが胆泥です。機序としては、アルブミンに結合しているCaを奪い去って結石化するとあります。 なので、Ca含む輸液との混合は禁です。特に新生児でリスク高いのですが、成人でも無石性胆嚢炎を引き起こします。薬剤中止で60日以内に改善します。なのでセフトリアキソンン投与中の患者ではMurphy徴候やエコーなどを定期的にフォローする必要があるでしょう。

もう一つのピットフォールは、E.coliやKlebsiella spp、Proteus sppなどにはセファゾリンや2世代のセフォチアムは効かないと一辺倒に考えている研修医の先生が多いことです。ですがそんな事はありません。むしろ感受性があれば、良いDe-escalationとなりますので積極的に行いましょう。

セフェム系は尿路感染症の切り札

嫌気性菌の関与を考えなくて良い感染症を知っていますか?そう、尿路感染症なのです。例外を除いては、嫌気性菌が起因菌となることはありません。よって嫌気カバーはないがGNRはしっかりとカバーできるセフェム系抗菌薬は尿路感染症に適任です。セフトリアキソンまたはセフォタキシムで経験的治療を行い、菌名と感受性わかればセファゾリンやセフォチアム、内服ならセファレキシンやセファクロルに変更なども可能です。日本ではキノロン系薬の乱用により耐性が非常に増えているので、特に覚えておきましょうね。

以上長くなりましたが、セフェム系でした!この記事の内容を知っていれば、もう十分です。あとは実際の使用症例で使い心地や、有害事象を体験して学んでいきましょう!Adios!

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コメント

  1. […] 内服なら第1世代セフェム系のセファレキシンやセファクロルを選びます。Bioavailabilityもよく、SSにも有効です。もしくはAMPC/CVAも使用可能です(使用するならオグサワ、オグパセにしましょうね)。詳細はペニシリン系とセフェム系の記事もどうぞ!ちなみに、他院でフロモックス(セフカペン・ピボキシル)やバナン(セフポドキシム・プロキセチル)を処方されて治療失敗した症例をよく見ます。失敗する原因としては、これら3世代セフェム系のBioavailabilityの低さ、GPCへの活性が1世代セフェム内服よりも劣ることが挙げられます(他にも患肢安静が保てていなかった、なども勿論ありえますね)。わざわざBioavalabilityの低く,不要なGNRカバーもある3世代セフェム内服を使用する理由はないので、皆さん気をつけましょう! […]

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