Dr.マクロのインフルエンザまとめ①

勉強
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みなさん、Ola!いよいよインフルエンザの季節がやってまいりました。救急外来でも流行を肌で感じております。

そこで今回から2回にわたって、インフルエンザ特集を行います!1回目の今回は、

  • 疫学
  • 症状
  • 診断

までをわかりやすく、できる限りEvidence basedでまとます!では、早速行きましょう!

疫学

インフルエンザには、A、B、C型まであります。実はC型もあるんですよ!でもヒトに感染するのはAかBなので、C型は話題にならないんですね。

AとBの表面には、ヘマグルチニン(HA)、とノイラミニダーゼ(NA)という2つのタンパク質が発現いています。この2つのタンパク質の組み合わせでウイルスを区別していきます。A型にはHA16種類、NA9種類が知られており、かなり多くのバリエーションが考えられます。一方、B型にはそれぞれ1種類のみなんです。なので、数年一度大流行(Pandemic)を引き起こすのはA型なんです。

さらには、A型の中には、ヒトに感染するヒトインフルエンザと鳥に感染する鳥インフルエンザがあります。そして、豚はこれらのインフルエンザ両方に感染しうるので豚さんの中で、インフルエンザが遺伝子再集合(合体!)して新型のインフルエンザが出来上がってしまうのです。2009年に豚インフルエンザとして流行したH1N1型はこの機序で出来上がったと考えられています。

大流行を起こすのは、A型です。しかし、我々が毎年悩まされる季節性インフルエンザはA型もB型もあります。迅速抗原検査でも両方の結果がわかりますよね。

ちなみに日本ではB型のほうが治りが遅い傾向にあるようです[1]

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インフルエンザ大流行年表

さて、インフルエンザ大流行の歴史は医療従事者なら知っておくべきと思うのでいかにまとめます。こう考えると近年に至るまで、インフルエンザのしつこさがすごいですね。次はいつ大流行してしまうのでしょうか。

  • 1918年:スペインインフルエンザ(スペイン風邪)
  • 1957年:アジアインフルエンザ
  • 1968年:香港インフルエンザ
  • 1977年:ソ連インフルエンザ
  • 2009年:豚インフルエンザ

この中でも、スペイン風邪は何億人という患者が発生し、数千万人が死亡してしまったという悲劇的な大流行でした。つい100年前ですからね。。。他人事ではいられません。

症状

これは経験した人には忘れがたいほど辛いですよね。私も非常に辛かった記憶があります。

高熱、悪寒戦慄、倦怠感、筋肉痛

空咳、咽頭痛、鼻汁

この色分けはなんでしょうか?青文字の症状はいわゆる上気道炎・気管支炎の症状です。なので、他のウイルスによる上気道炎や気管支炎でも発症します。

赤文字はインフルエンザ様症状とも言うべき、特徴的な症状たちです。これらの症状が強く、咽頭痛や咳嗽などは患者さん自身が意識できていないこともありますので、問診が重要です。

インフルエンザはその症状が強いことが特徴ですが、ワクチン接種者や高齢者では意外と症状が弱いこともあるので注意が必要です。流行時期は積極的に疑って診察していきましょう。

診断

さて診断はどうしましょう。もちろん、インフルエンザ患者との接触(Sick contact)は非常に重要です。それ以外だと、みなさんが真っ先に思いつくのは、インフルエンザ迅速検査ですよね!私も初期研修医の頃は、積極的にやっていました。ではこの検査に関してまとめましょう。

イムノクロマトグラフィー法によるインフルエンザ迅速検査

  • PCR検査と比較して、感度と特異度を算出した研究は複数あり[2]、おおよそ感度:60%前後、特異度:97%以上である
  • 偽陰性:発症から12時間以内と36時間以降では偽陰性が多いとされており、検査するなら発症から24時間程度で実施するのがよい可能性がある
  • 数%の確率で偽陽性もあるので、病歴や症状がインフルエンザと合わない場合はインフルエンザではない可能性も考慮
  • 感度はかなり低いために、流行時期に検査して陰性でも否定することはできない

特に最後の1文が重要です。なぜなら冬などの流行時期にこの検査をして陰性の結果でも否定できないならば、あまりやる意味はないと思いませんか?陽性でも陰性でも、インフルエンザとして対応せざるを得ないのなら、そもそも検査の意味はなんだろう、となってしまいます。なので迅速検査の適応は以下のように考えるといいと思います。

  • 流行時期(検査前確率が高くなる時期)→もはや検査せず症状と病歴から疑えばインフルエンザとする
  • 非流行時期(検査前確率が低い時期)→陽性であればインフルエンザを考慮する(偽陽性あるので確定は難しい)。陰性でも否定できないので注意

といった使い方が妥当かと考えます。どちらにしても解釈が難しい検査に違いありません。

もう一つ、インフルエンザ診断に有用な所見があります。それは咽頭後壁のリンパ濾胞です。通称、「インフルエンザ濾胞」と呼んだり呼ばなかったり。

文献3より引用

この濾胞は、流行時期に検証した結果、 感度94.5%、特異度98.4% というトンデモナイ精度を誇っています[4]。明日からすぐに活かせる知識ですので、是非チェックしてみましょう!

画像検査はどうする?

さて、インフルエンザ診療する上で画像検査は必要でしょうか。答えは「殆どの症例では不要だが、肺炎の合併などが考えられる場合は必要」が答えです。

あれ、どっかで聞いたことあるな。。。とDejavuに襲われたそこのあなた!!立派なトリッキー中毒です笑 そう以前に書いた気管支炎の記事でも同様のことを書きましたし、そこの原因ウイルスにインフルエンザもしっかりと入っていますね。なので断続性ラ音や、やぎ音、胸水を示唆する所見あればレントゲン写真やCTも考慮するのでした。

またインフルエンザ後肺炎に関しては別記事にありますので参照ください。

さあ、今日はここまでです!次回は治療と予防に関して勉強しましょう!

Adios!

引用文献

  1. Kawai N, et al. Clin Infect Dis. 2006 Aug 15;43(4):439-44.
  2. Rouleau I, et al. J Clin Microbiol. 2009 Sep;47(9):2699-703.
  3. Miyamoto A et al. Postgrad Med J. 2016 Sep;92(1091):560-1.
  4. Miyamoto A, et al .Gen Med2011;12:51–60
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コメント

  1. […] 高インフルンザ薬の機序は2種類です。ノイラミニダーゼ阻害薬とエンドヌクレアーゼ阻害薬です。あれ?ノイラミニダーゼってどっかで聞いたような、そうです前回の記事でインフルエンザウイルスの表面にある抗原の1つでしたね。この表面蛋白はウイルスが宿主細胞から出ていく(発芽するといいます)時に必須の蛋白で、それを阻害することでウイルスの増殖を防ぎます。 […]

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