Ola!Dr.マクロです。
昨日の地震で被災された皆様の安全と心より祈っております。
私には具体的にできることはありませんが、さらなる被害が出ないことを祈りつつ、役に立つ医学知識を書いていきます!
今日は私の名前と非常によく似た知識を披露します。その名もマクロCKです。一体なんのこっちゃ、と思われているでしょうからゆっくりとわかりやすく説明しますね!
CKとは
CKとはCreatine phosphokinaseの略で、CPKとも略されます。要はCreatineという物質のリン酸化を調整する酵素のことです。
ではCreatine(以下、クレアチン)とは何ぞや?クレアチンとは、
筋肉内でエネルギーを貯蔵する財布のような物質!
クレアチンは筋肉内で以下のような化学式でエネルギーを自由自在に利用しています。
クレアチン + ATP ⇔ クレアチンリン酸 + ADP
人はATPがエネルギー源なので、クレアチンにリン: Pをくっつけたり離したりすることでATPを財布から自由自在に取り出しているのです。この化学反応を触媒する酵素こそが、CKなのです!
ちなみにこのクレアチンは何度も使用していると劣化します(実際の財布もそうですよね!)。劣化したクレアチンはとある物質に変換されて尿中に捨てられます。それをCreatinine: クレアチニンといいます。そう、腎機能を評価するときに我々が最も使用する物質ですね!
CKにはいろんな種類がある!
そんなCKには、実は複数の種類があります。先ほどクレアチンは筋肉内にあると申しましたが、筋肉の種類によって大きく2つに分かれます。
- 骨格筋: CK-MM
- 心筋: CK-MB
という内訳です。MはMuscleの頭文字、BはBrainの頭文字とされています。ん?なぜ突然Brain??と思われたでしょう。実は、
- 大脳: CK-BB
という3つ目の分画が存在します。脳も筋肉と同じくらいにエネルギーを消費するのでこの酵素が存在しているのでしょう。以上のことからは、
CKは2つのパーツによって構成されている。MというパーツとBというパーツの組み合わせで3つの大別されている。
ということを理解してください。
マクロCKって何なのさ!?
やっとマクロCKの登場です。実は上記以外にも2つほどCKのサブタイプが発見されています。
- ミトコンドリアCK: 肝細胞癌やロタウイルス感染症などと関連
- マクロCK: 悪性腫瘍や膠原病などとの関連
です。これらも上記の3種類以外のCKとして覚えておく必要があります。ただ注意点もあります。いずれも特異性が高いわけではなく、関連性があるかもしれない、程度の根拠です。見つけた時は患者さんの全体像を評価して精査するかどうかを決めたほうが良いでしょう。
CK逆転現象
ここまでで、「CKとは何か?」、「CKの種類」、「マクロCKの意義」などが分かって頂けたでしょう。
次は、どのようなときにマクロCKを疑うのか?です。検査オーダー画面にマクロCKという項目はないと思います。もしかしたらCKアイソザイムという項目があるかもしれませんが、恐らく外注検査で数日かかります。
もっと早くマクロCKの存在に気が付くためには、「CK逆転現象」を勉強しましょう。つまり、
CKという大きな括りの中に、CK-MBという種類があるので
CK値>CK-MB値
となるはずですね。ところが、稀に
CK値 < CK-MB値
となることがあるのです。これが「CK逆転現象」です。
理由を解説します。まずCK-MB測定の原理を理解する必要があります。免疫阻害法という方法が用いられており、CK-Mサブユニットに反応する抗体を利用しています。この方法は、「血清中にはMMとMBがほとんどであり、BB、ミトコンドリアCK、マクロCKはほぼ存在しない」という仮定で行われている検査です。
抗CK-M抗体が反応すると、CK-MMは阻害されます。またCK-MBも一部阻害されてしまいますね。これで反応しなかった残りのCKはCK-Bユニットだけになります。ここでCK-BBは通常血清中に現れませんから、CK-Bサブユニットを持つCK分画はCK-MBだけということになります。よって抗CK-M抗体を反応させて生き残った活性を2倍した値(CK-MとCK-Bは1対1対応に結合しているため)がCK-MB値として判定されるのです。
この方法の問題点は、上記の仮定です。つまりマクロCKが増えている状況を考えると、マクロCKは抗CK-M抗体には反応しないためマクロCK×2の分だけ結果が上昇してしまうのです。よって「CK < CK-MB」という関係式が存在しうるのです。これはCK-BBが上昇した時も同様のことが起こります。脳挫傷や脳腫瘍などで生じる可能性がありますね。
よって、マクロCKはあくまでCK逆転現象の原因の一つであり、他にもCK-BB上昇、ミトコンドリアCK上昇なども検討すべきですね。
なお、上記のようにCK < CK-MBとならないまでも、CK-MB/CK > 25%となればマクロCK、CK-BB、ミトコンドリアCKを疑います。なぜならCK-MBを最も多く含む心筋において、
MM : MB = 75 : 25
程度の比率だからなのです。これは急性冠症候群の診療でも有用な知識です。つまり、
心筋障害が原因のCK上昇ならば、CK-MB / CK ≦ 25%となる
ということが導けますね。自分の症例を振り返って見てください。
Take home messages
今回から、カッコつけてTake home messagesで締めてみたいと思います(笑)
- CKの種類を覚える!
- マクロCKの意義と限界を覚える!
- CK逆転現象の原理と鑑別を覚える!
でした!今日はここまでです。
Adios!
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