細菌性髄膜炎へのステロイドは、実は正しく投与できていない?

勉強
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Ola!

みなさん、Tuesdayですよ!週の半ばにも差し掛かっていないという。。。。辛いですね。でもそんな憂鬱も、当ブログで勉強すればぶっ飛ぶはずです!

今回は、細菌性髄膜炎に対するステロイドの併用についてです。細菌性髄膜炎は研修医も対応をマスターすべき必須テーマですね。

上級医から、「髄膜炎にはステロイドを使うといいんだよ」なんて得意げに言われたことはないですか?そうなんです、実は適切に使用すれば死亡率も下げてくれる可能性がある素晴らしい治療なんです。

ただいくつか注意点があります。しかもこれらの注意点を守らないと効果がないかもしれないんです。。。。。しかもしかも、あまり強調されないのに重要な注意点がありますので、一緒に学んでいきましょう!

そもそもなんでステロイド?

この疑問が非常に重要です。なんでステロイドを使おうと思ったのか。この疑問を解決するためには、この記事で書いた、背景読みが非常に役立ちます。

後ほど紹介しますが、2002年のNew England Journal of Medicine (NEJM)が細菌性髄膜炎に対するKey paperです[1]。その背景にはこう書いてあります。

「いくつかの動物実験では、髄液中でおこる抗菌薬による細菌の死によって炎症物質が惹起され、それが神経障害を引き起こしている可能性がある。それらの炎症を抑える薬を使えば後遺症も減るはずである。」

と。そこに2つの論文が引用されています。そうです。とっても重要な疑問に背景を読んだ段階で答えが出ましたね。

初学者にとってはこれが重要なんです!

というわけで、ステロイドを使い始めた理由は、髄液中の炎症を抑えるためなんですね!

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ステロイドを使用してよい髄膜炎とは?

本日のPointの1つ目です!ステロイドが有効な髄膜炎は決まっています。

ずばり!

「肺炎球菌性髄膜炎」

です!成人の髄膜炎においては肺炎球菌による髄膜炎だけが、ステロイドの投与によってメリットがあります。これには3つの重要なメタ解析(MA)やSystematic review(SR)があります。

まずは2004年のLancet IDです。最初のSRです。ただし、このSRまでに行われた研究で最大のRCTがNEJM2002なので、かなり引っ張られています。ただ肺炎球菌では死亡率や後遺症率が有意に低下しましたが、髄膜炎菌では有意な結果ではなかったです。

2つ目は2010年のLancet Neurologyです。MAですが、この研究ではなんと肺炎球菌のサブグループでもメリットが認められませんでした。

3つ目、最も最近のSRかつMAでもあるコクランの解析は25の研究を含む大規模なレビューで、死亡率は肺炎球菌でのみ低下しました。聴力障碍などの神経障害は、先進国では減少し、発展途上国では有意な差はみられませんでした。

これらの結果から、肺炎球菌性髄膜炎に対するステロイドの併用療法は、死亡率を減らし神経後遺症も減らす可能性があることが示唆されます!

用法用量は??

これが2つ目のPointです!

まず代表的な用法用量を書きます。

  • デキサメタゾン 0.15 mg/kg 6時間毎
  • デキサメタゾン 10mg 6時間毎

というのが代表的な用法用量です。なんで2パターンあるのかって?それは研究毎に上の2パターンがあるからです。調べる限りは10㎎としている研究が近年に多く、0.15㎎/kgは2002年にインドとパキスタンからの研究で試されています[5, 6]。Sanford guide®では0.15㎎/kgが、Johns-Hopkins ABX guideでは10㎎が書かれています。

ただ日本人は欧米人よりも体が小さいので、0.15㎎/kgで臨機応変に設計したほうが良いかもしれませんね。

絶対に一度ははまるPitfall!

最後に、超重要なPitfallをお伝えしましょう。それは一番最初のデキサメタゾンの投与タイミングです。「え?いつでもよくね?」なんて思っていると足元をすくわれます。

実は、肺炎球菌性髄膜炎に対するデキサメタゾンは、「抗菌薬投与の前、もしくはほぼ同時に投与しなくてはならない」のです。えー!!ってなりますよね。

だって、髄膜炎と認識した段階で、迅速に血液培養を採取して抗菌薬をすぐに投与します。腰椎穿刺すら待ちませんからね!このPitfallを知ってないと、デキサメタゾンの投与は不可能です。この理由は研究でそのようにデザインされたことや、そもそもが髄液での細菌死による炎症を抑える目的なので、抗菌薬が効くその前に投与したという、病態生理学的な背景があります。

なので仕方がないのです。。。。これらからわかることは、肺炎球菌とわかる前に経験的にデキサメタゾンの投与を行うべき、ということです。Gram染色や培養結果からほかの菌が推定される場合には中止すればよいのですから。

Take Home Messages

さあ、どうでしたか?知らないこともありましたか?もしそうならお役に立ててうれしいです!最後にTake Home Messagesをまとめます。復習に使ってください!

Adios!

  • ステロイドの併用が有効なのは、肺炎球菌性髄膜炎!
  • 使用するステロイドはデキサメタゾンで、0.15㎎/kgか10㎎/回を6時間毎
  • 最初のステロイドは、抗菌薬投与の前か、ほぼ同時に!

引用文献

  1. N Engl J Med. 2002 Nov 14;347(20):1549-56. PMID 12432041
  2. Lancet Infect Dis. 2004 Mar;4(3):139-43. PMID 14998499
  3. Lancet Neurol. 2010 Mar;9(3):254-63 PMID 20138011
  4. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Sep 12;2015(9):CD004405. PMID 26362566
  5. Neurol India. 2002 Mar;50(1):63-7. PMID 11960154
  6. J Pak Med Assoc. 2002 Jun;52(6):233-9. PMID 12481630

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