インフルエンザ後肺炎

勉強
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どうも皆さん、こんばんみ!医師界のマイケル・ジャクソンこと、Dr.マクロです!ここのところ、働き先の近くではインフルエンザA型がポツポツと出てきております。季節外れですが、ご高齢の方々にとっては命取りにもなる病気ですね。心配な今日このごろで、マスク着用、手指衛生は徹底しております。

ところで、インフルエンザがなぜ命取りな病気かご存知ですか?それは、細菌感染症の共感染が主な原因だと言われています。過去のJAMAに良いレビューがありましたのでそれを中心にまとめていきますね!

Case 73歳男性 発熱、呼吸困難

今回は症例ベースでやりましょう!自分がERで初療しているつもりで読んでくださいね!

脳梗塞の既往とレビー小体型認知症の併存症あり、ほぼ寝たきりで施設入所中です。

  • 入院1週間前:発熱と悪寒戦慄あり、近医を受診した。インフルエンザ迅速検査でA型陽性であり、インフルエンザの診断でオセルタミビル5日間内服で帰宅となった。
  • その後、解熱傾向となるも本人の全身状態は改善せず。
  • 入院前日:再度38度超える発熱あり。喀痰量と咳嗽の増加もあった。
  • 入院当日:食事も取れなくなり、SpO2:80%前半まで低下したため、ERへ救急搬送となった。
  • 来院時バイタルサイン:体温38.9度、血圧:160/79、脈拍数:100bpm、整、呼吸数:24回/分、SpO2 96%(鼻カニューラ3L/min)
  • 身体所見:舌乾燥、左下肺野背側でLate inspiratory crackles聴取、心音整、過剰心音なし、心雑音なし、腹部所見に異常なく、CVA叩打痛なし、下腿浮腫はなし
  • 血液検査では、WBCとCRP上昇ありましたがそれ以外に特異的な所見はなし
  • 画像では、レントゲン検査では異常指摘できず。胸部単純CTまで撮影し、右下葉S10 に一部空洞形成を伴う浸潤影があった
  • Gram染色では、Geckler4の良好な痰が取れ一部貪食像を伴うGPC clusterが大量に見えた。
  • さて、あなたなら治療はどうしますか?
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なぜインフルエンザ後に肺炎が起こる?

素朴な疑問ですが、なぜインフルエンザ後肺炎が注目されるのでしょうか。それには2つの理由があります。

1つは、その病原性の強さです。他のウイルス性上気道炎でも細菌感染症を合併する可能性は十分にあります。しかしインフルエンザはその症状の強さが示しているように、気道粘膜の上皮細胞を強く障害してしまいます。例えば、インフルエンザの持つノイラミニダーゼは上皮細胞のシアル酸を溶かし細菌の粘着と播種を促進します。ノイラミニダーゼ阻害薬を使用するとこれを阻止することが可能なので細菌性肺炎のリスクの高い高齢者では抗インフルエンザ薬の投与を検討してもよいのですね。

2つ目はその感染力にあります。御存知の通り、インフルエンザには少流行と大流行があり、スペイン風邪や香港型インフルエンザなど一定の期間毎にPandemicを引き起こします。1918年の大流行では死者のほとんどに、2009年のH1N1型の大流行では34%に細菌の共感染があったとされます。なので、ただでさえ重症化しやすいインフルエンザ後肺炎が、大流行に乗って大量発症するので要注意なのです。

原因菌は違う?治療は?

ではインフルエンザ後の肺炎だからといって、Work Upは変わるのでしょうか?いえ、基本はやはり一緒です。つまり、適切に培養検体をとりGram染色をし、培養検査を出し、速やかに適切な抗菌薬を投与するのです。ただし、気をつけるポイントがありますので列記しますね。

  • インフルエンザに対して未治療である場合は、そもそも感染しやすい舞台を作っているインフルエンザウイルスを叩く必要がありますのでノイラミニダーゼ阻害薬(内服ならオセルタミビル、点滴ならペラミビル)を併用します。
  • 原因菌として黄色ブドウ球菌(MSSA&MRSA)を考慮する必要がある
  • しかしもちろん一般的に市中肺炎で検出されるS.pneumoniaeやその他のStreptococcus属も有り得ます

黄色ブドウ球菌が鑑別に挙がることが特徴的ですね。MSSAであればCTRXやABPC/SBTでもカバー可能ですが、MRSAはどうでしょう?全ての症例でバンコマイシンやリネゾリドを使用しますか?困ったときは常に患者さんを見ましょう。我々が治療する対象は患者さんであって血液検査や画像、染色ではないですからね!

バイタルサインが不安定(呼吸不全や敗血症性ショックなど)、または壊死性肺炎を考慮する場合は経験的に抗MRSA薬を投与して良いでしょう。壊死性肺炎では、血痰などが出やすい特徴があるのでそれをヒントにしてもよいです。あと、忘れてはいけないのはGram染色です。良好な痰が取れて、GPC clusterやその貪食像が見えた場合は要注意です。

治療の結論としては、「基本的には市中肺炎の治療と同じでよい(CTRX、CTX、ABPC/SBTなど)が、MRSAのリスクを考慮し抗MRSA薬の投与を判断する。バイタルサイン不安定であれば緑膿菌カバーも考慮して良い」といったところでしょうか。とにかくS.aureusの存在を忘れないようにしましょうね。

Case

上記の症例では、血痰などはなく酸素必要量も鼻カニューラで足りる状況であったのでMRSAまでカバーは含めずCTRXで治療開始した。非定型肺炎らしさ(マイコプラズマとクラミドフィラ)はなく、マクロライド系は使用しなかった。3病日には解熱し、酸素投与も中止できた。喀痰培養からは4病日にMSSAが検出されたためCEZへ変更し計7日間の治療を完遂した。

本日は以上です!少し長かったですかね。Caseは実際のCaseで非常に教育的だなと感じたので少し修正して共有しました。質問や意見あればどしどしコメントお願いします!

参考文献

  • Chertow DS, et al. Bacterial coinfection in influenza: a grand rounds review. Jama 2013;309:275-82. インフルエンザ後肺炎の総論レビュー
  • Sanz-Ezquerro JJ, et al. Individual expression of influenza virus PA protein induces degradation of coexpressed proteins. J Virol. 1995;69(4):2420-2426. 30.
  • Hinshaw VS, et al. Apoptosis: a mechanism of cell killing by influenza A and B viruses. J Virol. 1994;68(6):3667-3673. 31.
  • Mori I, et al. In vivo induction of apoptosis by influenza virus. J Gen Virol. 1995;76(Pt 11):2869-2873 以上3つは、インフルエンザでなぜ細菌感染が増えるかの研究
  • Gillet Y, et al. Factors predicting mortality in necrotizing community-acquired pneumonia caused by Staphylococcus aureus containing Panton-Valentine leukocidin. Clin Infect Dis. 2007;45(3):315-321. S.aureusによる壊死性肺炎の死亡率の予測因子の検討
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コメント

  1. […] またインフルエンザ後肺炎に関しては別記事にありますので参照ください。 […]

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