みなさん、Ola!医療界のZOZOことDr.マクロです。今回は前回の続きで肺炎球菌ワクチンに関してです。色々な知識があるのですが、内科医が臨床で使いうる知識を先にまとめて、後に病態生理などをまとめます!
肺炎球菌ワクチン
- 日本では2種類のワクチンがある
- 莢膜多糖体(ポリサッカライド)23価ワクチン:PPSV23(Pneumococcus PolySachrides Vaccine)、ニューモバックス
- Conjugate13価ワクチン:PCV(Pneumococcsu Cnjugative Vaccine)、プレベナー
- 定期接種または任意接種:PPSV23
- 任意接種のみ:PCV13
- 定期接種は65歳以上で5の倍数の年齢の際に接種(65、70、75、80、85、90、95、100)
- PPSV23接種した場合
- PCV13は1年以上空けて接種
- PPSV23は5年以上空けて接種
- PCV13接種した場合
- PPSV23は6ヶ月以上-4年以内に接種
- 接種対象
- 65歳以上の成人
- 65歳未満でも肺炎球菌感染症のハイリスク者
以上が肺炎球菌ワクチンのエッセンスです。主に引用文献1を元に参照しています。
PPSV23とPCV13
上記のように、PPSV23は莢膜抗原のみで構成されています。一方、PCV13は莢膜抗原を蛋白と結合させて免疫原性を上昇させているワクチンです。
簡単にすると、
- PPSV23のほうが、より幅広い抗原をカバーできている、成人におけるエビデンス豊富
- PCV13のほうが、抗原の種類は少ないがより強く抗体産生を刺激できる
といった感じですね。なので、PCV13→PPSV23の順序で打ったほうがより抗体価が上昇しやすいとされます[2-5].
ただし実際は、1年後に抗体価を図るとどちらの順序でも抗体価は変わらなかったという研究が後に相次ぎ、接種順序に関してはそこまで厳密でなくてもよいようです[6]
PPSV23の効果
アメリカでは1970年代に開発実用化されたワクチンで歴史が古く、よく研究されています。すでにCochraneよりMeta-analysisも出ており[7]、そちらでは以下のような結果となっています。
- 侵襲性肺炎球菌感染症(以下、IPD)を先進国でも発展途上国でも減少させた
- 肺炎に関しても、Non-IPDでもIPDでも発症を減少させた
- 発展途上国に関しては、原因菌に関わらず肺炎の発症を減少させた
といった結果が判明しています。これは接種するしかないですね!3番目の結果に関しては、発展途上国の肺炎の起因菌は肺炎球菌の割合が大きいことが原因とされています。
PCV13の効果
PCV13ワクチンは小児科分野で有効性が示されました[8].90%以上の減少率を叩き出しており、これも接種するっきゃない!となりますよね。
では成人ではどうなの?という疑問に答えようとしたのが、オランダからの贈り物、「CAPiTA trial」[9]です。85,000人の免疫正常者を対象にPCV13の効果をみたもので、50%弱の肺炎リスク減少、70%以上のIPD減少を示しました。
ただこの研究はあくまでワクチンvsPlaceboなのでPCV13がPPSV23よりも優れているかどうかは評価できませんね。
以上肺炎球菌ワクチンの話題でした。成人におけるワクチンの種類と接種タイミングはわかったでしょうか。適切にワクチンに関するアドバイスができるように勉強しておきましょう!
引用文献
- 65 歳以上の成人に対する肺炎球 菌ワクチン接種の考え方 第2版 2017-10-23
- Clutterbuck, E. A., et al. (2012)The Journal of Infectious Diseases 205(9): 1408-1416.
- Greenberg, R. N., et al. (2014). Vaccine 32(20): 2364-2374.
- Jackson, L. A., et al. (2013). Vaccine 31(35): 3594-3602.
- Musher, D. M. (2013). Infect Dis Clin North Am 27(1): 229-241.
- Lazarus, R., et al. (2011)Clinical Infectious Diseases 52(6): 736-742.
- Moberley, S., et al. (2013). Cochrane Database Syst Rev(1): Cd000422.
- Black, S., et al. (2000). Pediatr Infect Dis J 19(3): 187-195.
- Bonten, M. J. M., et al. (2015). NEJM 372(12): 1114-1125.
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