みなさん、Ola!楽しい楽しい日曜日ですね!私は待機なので、待機しつつブログ更新しております。
ラグビー日本戦は素晴らしかったですね!南アフリカ戦の再来といったところでしょうか。試合を見ながら思いついたんですよね、そうだ気管支炎に関してまとめよう!って。
そこで今回は、気管支炎に関するまとめです。特に若手の方々は、肺炎と気管支炎の違いを意識することが難しいですよね。
#急性気管支炎、肺炎
みたいな感じで書いていることが多いかと思います。これでも患者さんは治るかもしれませんが、抗菌薬の不適当な使用が多くなってしまいます。適切に気管支炎と肺炎を鑑別しマネジメントできるようにしましょう!
なぜ肺炎と気管支炎を分ける必要があるの?
鑑別する必要があるのは、
「気管支炎では抗生剤は不要で自然寛解しうる」
「肺炎は多くの場合に抗生剤投与が必要」
だからです。よって抗菌薬を投与する必要のない気管支炎にキノロン系やオグパセで治療するのは抗菌薬の不適切使用なわけです。多くは自然治癒するので対症療法で十分!なのです。
気管支炎と肺炎の違いって?
気管支炎の定義とはなんでしょうか。教科書的には以下の定義があります。
「肺炎の所見を伴わない、下気道、特に気管支レベルでの急性感染症」
です。でもこれくらいなら知ってるよ!となるかもしれませんね。臨床でより重要な違いをまとめましょう!
上気道炎、気管支炎、肺炎と3病態を比較してみました。ちなみに上気道炎と気管支炎はOverlapする部分もあり、上気道炎が先行して気管支炎に至る場合もあります。どちらにせよ治療は対症療法なので、あまり目くじら立てて鑑別する必要はないかもしれませんね。
重要なのは、肺炎かどうかを見極めることです。この表を解き明かしてみると、特に身体所見と画像所見にポイントがありそうですね。そう、気管支炎の診療に当たっては、肺炎をいかに除外するかが争点となります。
上記のように、気管支炎はあくまで気管支レベルまでの炎症で留まるので身体所見上は、連続性ラ音が聞こえることはあっても、断続性ラ音、ヤギ音が聞こえることはありません。さらに、胸膜痛や胸水を示唆する所見も肺炎でしか見られません。
これらの所見が、ある場合には胸部画像検査を行い肺炎を鑑別する必要があります。まとめると、
- 気管支炎診療では、肺炎を除外することが重要
- 症状と身体所見から、肺炎の可能性を疑えば画像検査を行う
逆に言うと、これらの身体所見がない場合は気管支炎の診断でよく、胸部画像検査を行っても治癒までの日数やその後の入院率は変わらないとされます[1].
また、ある意味では当然ですが、以下のようなサインがある場合も気管支炎よりも肺炎を疑い画像検査を施行するのは妥当とされます[2]
- 頻呼吸、頻脈など熱以外のバイタルサイン異常
- 意識障害
見落としやすいもう一つの鑑別
さて、上気道炎や肺炎との鑑別を述べてきました。ここで意外と見落とす鑑別疾患があります。それが、
- 副鼻腔炎
です。いやいや、さすがに見落とさないよ!って思っているあなたこそ、気管支炎や上気道炎の診療でちゃんと所見をとっていなかったりしていますよ!(かくいう私も若手のころはそうでした。。)
- 顔面痛(前かがみで強い)
- 鼻水が強い
- 後鼻漏による咳嗽
- 副鼻腔叩打痛
などの所見は副鼻腔炎の可能性を高めるので丁寧に問診しましょう[7]。後鼻漏による咳嗽は、問診が重要で、「寝ると咳嗽が増えませんか?」と聞いてみてください。寝ると鼻汁が上咽頭側に垂れてきて知らず知らずに咳嗽の原因となります。注意点としては、「逆流性食道炎」も同様のエピソードになります。
副鼻腔炎も常に鑑別に入れておきましょう!
気管支炎の原因
上記の表のように、多くはウイルス性です。ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、などです。これらの中で、インフルエンザウイルスは死亡率が高くその後に肺炎も合併しやすいです。詳細はインフルエンザの記事に書きますが、ハイリスク患者には迅速抗原検査を施行し抗ウイルス薬の投与も検討します。
残りの細菌たちは、どんな細菌がいるのでしょうか。
- Mycoplasma pneumoniae
- Chlamydia pneumoniae
- Bordetella pertussis
が3大原因です。といっても10%弱程度の頻度ですので、1つ1つの細菌に分けるとかなり少ないことが分かります[3]。ではこれらの細菌を疑う場合に選ぶ抗生剤はなんでしょうか。
答えは「テトラサイクリン系かマクロライド系抗菌薬」です。特にMycoplasmaは世界的にマクロライド耐性化が進んでおり、第1選択薬はテトラサイクリン系のドキシサイクリンとされています(Sanford Guide参照)。なので、高齢者の気管支炎や若年者で対症療法では難治性の気管支炎などではこれらの抗菌薬使用も検討されます。
しかし、忘れてはいけないことはほとんどの症例が自然治癒するので、抗菌薬投与が必要な症例はほんのわずかです!そこだけは必ず覚えておきましょう。Mycoplasmaでは、エリスロマイシン投与によりPlacebo群と比較して、仕事の欠勤日が短くなるが、咳嗽やほかの症状を有意に短くすることはなかったという面白い研究もあります[6]。少し古いですが興味のある方は読んでみてください。
対症療法
対症療法としては、鎮咳薬や去痰薬を使用します。いずれもエビデンスのある薬剤というのは特にありません[4]。鎮咳薬としてはデキストロメトルファン(メジコンⓇ)がよく処方されますかね。
ただし、エビデンスが乏しい一方で、気管支炎の患者さんは抗生剤を希望することが多いため、しっかりと自然経過を説明し対症療法薬を処方することで抗菌薬を処方せずに患者満足度を上げるという副次的な効果もあります[5]。
さて今回はここまでにしましょう。皆さんの中で気管支炎をしっかりとイメージ作ることができましたか?
上気道炎、気管支炎、肺炎を鑑別できるように毎回努力することで余計な抗菌薬使用を減らせるはずと信じております。ではでは、Adios!
引用文献
- Cao AM et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Dec; 2013(12)
- Metlay JP et al. 1997 Nov 5;278(17):1440-5.
- Clark TW et al. J Infect. 2014 Nov;69(5):507-15.
- Smith SM et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Aug 15;(8):CD001831.
- Wenzel RP et al. N Engl J Med. 2006 Nov 16;355(20):2125-30.
- King DE, et al. J Fam Pract. 1996 Jun;42(6):601-5.
- Rosenfeld RM. N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):962-70.
コメント
[…] あれ、どっかで聞いたことあるな。。。とDejavuに襲われたそこのあなた!!立派なトリッキー中毒です笑 そう以前に書いた気管支炎の記事でも同様のことを書きましたし、そこの原因ウイルスにインフルエンザもしっかりと入っていますね。なので断続性ラ音や、やぎ音、胸水を示唆する所見あればレントゲン写真やCTも考慮するのでした。 […]