COVID-19~抗凝固療法①~

COVID-19
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Ola!

皆さんお元気ですか。昨日の東京の雪はすごかったみたいですね!突然の雪景色で、興奮したのか友人が駆け回っておりました(もちろんマスクで一人で)。

さあCOVID-19シリーズもどんどん更新しますよ!3回目のテーマはコロナと凝固です。これまた、臨床家泣かせのテーマなんです。なぜならこのテーマの答えはないから!現在進行形でお悩みの臨床家の方も、そうでない方々もぜひ参考にされてください!今回も2回に分けます!

時間がない!臨床に関わるところだけ読みたい!という方は、「検査」の項目からご覧ください。

今回の内容

①では以下の内容を平易に解説していきます!

COVID-19における凝固異常とは?

どんな検査異常がおこるのか?

早速行ってみましょう!

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COVID-19と凝固異常

COVID-19において重要なテーマが凝固異常です。これは研究においても臨床感覚としても、「COVID-19の患者では血栓形成が多い!」のです。血栓形成の内訳では、静脈血栓症(1)も動脈血栓症(2)も微小血管血栓(3)も増えることが分かっています。

癌患者様で過凝固となる事実は有名で、多くの医師が知っていることかと思いますが、COVID-19も同様なイメージで考えておくといいと思います。エビデンスではなく実際の臨床上の感覚から言っても多いです。D-dimerがなかなか下がらないから、造影CTまたは下肢静脈エコーを一応しておくか、と言って評価してみると1/3くらいの確立で何かしらの所見があります。

「COVID-19と凝固」はニコイチで考えておくべき病態です。

ではなぜ凝固異常が起こるのか?これは基本に立ち返って、「Virchow `s triad, ウィルヒョウの3徴」を思い出しましょう。まず復習です。

Virchow`s triad

1: 血管内皮細胞の障害

2: 血流の停滞

3: 過凝固状態

これがいわゆる血栓形成に寄与する3大因子と言われています。COVID-19ではこれら3要素すべてに異常をきたします。

血管内皮細胞障害

直接的な内皮細胞障害や微小血管障害、炎症の直接波及、サイトカインストーム、流行りのneutrophil extracellular traps (NETs)の関与などが提唱されています。細かく文献を引くと大変なのでわかりやすいReviewのみ引いておきますね(4)

血流の停滞

特に中等症~重症の患者様は苦しくて動けないので、当然血流は停滞して血栓ができやすくなります。この機序に関してはCOVID-19に特異的な項目ではないのですが、「呼吸困難」という症状は直接動けないことにつながるので重要性は高いです。

過凝固状態

下記のような要因が挙げられていますが、これまた最近はやりのトロンボエラストグラフィー: TEGも研究されていて、COVID-19では過粘張な状態であることが示唆されています(5, 6)。

  • Ⅷ因子の増加
  • フィブリノゲンの増加
  • vWFの増加
  • TEGにおいて過粘張となる

今までの記事でわかって頂きたいのは、COVID-19では血栓が出来やすい!ということです。こういうシンプルな結論に至るのに、本当に世界中の研究の力が必要なんですね。

検査

さて、今回の記事のラストは検査をどうするか?です。ここは臨床に関わるので時間のない人はここから読んでも大丈夫です!

まず外来患者では凝固をルーチンで測定する必要はないと考えます。これはそもそも外来に来られるような方は歩行できる、つまり血流の停滞はないので血栓リスクは一段と下がります。また重症度としても「サイトカインストーム→内皮細胞障害」とはなっていない可能性が高いので、血管内皮細胞障害のリスクも下がります。過凝固状態に関しては外来患者のデータを検討した研究は見つからなかったので不明です。

次に入院患者では、以下の項目を入院時ルーチンとして測定しています。

PT: 正常~やや延長

APTT: 正常~やや延長

フィブリノゲン: 上昇

D-dimer: 上昇

の4点セットです。COVID-19で多くみられる変化も加えました。そして入院後はどうするか。これは施設間で差が出るとは思いますが、私は少なくともCOVID-19の病勢が安定するまではD-dimerは追います。なぜなら以下のようなパターンに多く出くわすからです。

  1. D-dimerが上昇していなかったが、病勢の増悪と共に上昇してくるパターン
  2. 入院時に3以上など比較的高く、治療開始後も上昇してくるパターン
  3. 入院時に高く、いったん低下傾向となったが、その後再度上昇に転じるパターン

などです。これらのパターンではいわゆる静脈血栓塞栓症: VTEが併発してしまっている可能性を評価せざるを得ません。これはCOVID-19に携わっている医師なら納得していただけるHistoryではないでしょうか。

画像検査

これは入院時のルーチン検査ではしません。血栓症のリスクが高いとはいえ、全患者でやっていては検査室の感染リスクも高いし、そもそも病院が回らなくなりますからね。画像検査をやるときは、以下のような基準にしています。

  • 臨床症状・所見からVTEが疑わしい時
  • D-dimerの上昇が止まらないとき
  • D-dimerが高値で原因不明の発熱があるとき

です。これらの状況であれば感染拡大のリスクは承知でもエコーやCT検査をする価値はあるでしょう。特に臨床症状や所見という部分で、「肺炎像は改善してきている、または新規の陰影はないのに酸素化が悪くなった」という場面では肺血栓塞栓症: PTEを疑ってください。ないだろうと思って撮影してあった!なんてことはいくらでも起こっています。

今回は以上です!今までコメントをくださった勇者はいらっしゃらないのですが、皆さんの診療経験や意見も聞きたいので臆せずコメントください!必ずお返事します!

Adios!

引用文献

  1. Ann Intern Med. 2020 Aug 18;173(4):268-277. PMID: 32374815
  2. JAMA. 2020 Aug 25;324(8):799-801. PMID: 32702090
  3. N Engl J Med. 2020 Jul 9;383(2):120-128. PMID: 32437596
  4. Eur Heart J. 2020 Sep 1;41(32):3038-3044. PMID: 32882706
  5. J Thromb Haemost. 2020 Jul;18(7):1747-1751. PMID: 32302448
  6. J Thromb Haemost. 2020 Jul;18(7):1738-1742. PMID: 32302438
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