Ola!Dr.マクロです。今週末もスゴい雨になるようです。台風19号被災地の方々、改めて避難警報などに注意してください。道路交通情報にも警戒しましょうね。
さて、今回は抗MRSA薬の続きでダプトマイシンについてです。まだ薬価の高いお薬なので研修医の先生方は自分でオーダーしたりは無いかもしれませんね。でもこれから必ず使う場面に遭遇すると思うのでここでまとめておきましょう!
押さえるべきは、弱点と副作用です!
ダプトマイシン(以下、DAPT略)
日本で適応があるのは、MSSAまたはMRSAによる
- 皮膚軟部組織感染症
- 菌血症
- 右心系感染性心内膜炎
です。ここで「あれ?肺炎は?」と思った方、鋭いですね。肺炎に対してDAPTは使用できないのです。
理由は簡単で、
「肺胞サーファクタントで不活化されてしまう」
からなんです。動物モデルで示唆されていること[1]や、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌による市中肺炎に対してCTRXと比較した研究でも非劣性は示せなかったことから肺炎には使用できません[2]。
その他の適応疾患では、バンコマイシンに対する非劣性が示されており使用可能です!
DAPTの用量問題
基本的な用量は以下の通りなのですが、、、、
- 皮膚軟部組織感染症→4mg/kg 1日1回
- 菌血症、右心系IE→6mg/kg 1日1回
ただし、実は海外では更に高用量のDAPTの効果や安全性に関するStudyが多くあります[3, 4, 5]。8mg/kgなどの高用量では
- 左心系IE
- 骨髄炎
- Vancomycin-Resistant Enterococcus(いわゆるVRE)感染症
などの治療もそれぞれバンコマイシンやリネゾリドに対して非劣性であり、医学的には使用可能なのです[6]。保険適応外の仕様なので、必ずID teamやICTと相談して必要であれば使用しましょう。
副作用
DAPTに特徴的な副作用があります。
- クレアチンホスホキナーゼ(CK)上昇±筋症
- 好酸球性肺炎
- INR偽延長:試薬と反応するらしい
CKに関しては、筋症(筋痛)がある場合か、CKが基準値の10倍以上になるならば中止すべきです。またスタチンとの併用はやはりリスクなので一時的にスタチン中止も検討します[7].
好酸球性肺炎に関しては、2010年に2例の症例報告があります[8]。私自身も経験があり、薬剤の中止とステロイドが著効しました。呼吸状態や聴診、レントゲン検査を定期的に行いましょう。
さて、今回も文献が多かったですが、どうでしたか?DAPTがより身近な薬剤になりましたか?腎機能で調整不要だし、1日1回なので点滴外来も可能だし、限界を知ればものすごく便利な薬剤なのでぜひ!
Adios!
引用文献
- J Infect Dis. 2005 Jun 15;191(12):2149-52.
- Clin Infect Dis. 2008 Apr 15;46(8):1142-51.
- Clin Infect Dis. 2009 Jul 15;49(2):177-80.
- Clin Infect Dis. 2010 Jun 15;50(12):1568-74.
- Antimicrob Agents Chemother. 2006 Oct;50(10):3245-9.
- Antimicrob Agents Chemother. 2014;58(2):734-9.
- Clin Infect Dis. 2018 Oct 15;67(9):1356-1363.
- Clin Infect Dis. 2010 Mar 1;50(5):737-40.
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