Ola!今回は、血小板減少を取り扱います!外来でも、病棟でも遭遇する頻度の多い検査異常ですよね。しかも、なんとなく薬剤性かな?なんて評価で終わらせがちですし。そこで、今回は血液内科専門医の先生に紹介差し上げるまでに、一般内科医、研修医、専攻医の先生方がすべき対応をまとめましょう!
血小板減少を見たらまずすること?
想像してみてください。血液検査を見て、新規の血小板減少を発見しました。あなたなら次に何をしますか?
- 成書を広げて血小板減少の鑑別を考える
- 血小板輸血をオーダーする
- 嫌なものには蓋をする
- トリッキー先生の処方箋に素晴らしい記事があるので検索する
さあ、どれでしょう?実はこの中には正解はありません(4はギリギリOUTです笑)。正解は、
- すぐに患者さんに会いに行く!
です。そして、全身の出血症状を探します。特に、粘膜出血(口腔粘膜や口蓋の出血)を見つけに行きます。実は、粘膜出血はWet purpuraと呼ばれ、頭蓋内出血や消化管出血のリスクが高いとされています!
また値によって、輸血適応も迅速に評価します。
- 5万・・・小手術においても重大な出血の危険性はないが、出血傾向ある場合は輸血の適応
- 2-3万・・・血管穿刺でも重大な出血や止血困難を呈することは少ないが、出血傾向あれば輸血適応
- 5千-1万・・・重大な出血が有意に多いので輸血適応
これに従えば、適切に輸血が可能と考えます。詳細は輸血適正使用の手引も参照ください。
アプローチ法
まずはみなさんが知りたいであろうと思っている血小板減少のアプローチをマインドマップで示しましょう! 今回はMindomoでマッピングしています!Mindmeisterでも作成してみました!どちらが良いでしょうかね。それぞれ上から順番に検討していくと漏らしが少ない気がします。
Mindomoのいいところは、アウトラインを作成してそれをマインドマップに変換してくれる点です。非常に作りやすく気に入っています。
一方、MindMeisterはエクスポート形式豊富で、いろんなテンプレートもあり作成しやすいです。
なぜ、フローチャートじゃないの?って思う人もいるでしょう。フローチャートって流れは非常にわかりやすいんですが、そのFlowで全て完全に網羅することは難しい事が多いです。しかも、過ぎてしまったFlowは見返さない傾向にあると思うので、見逃しも多い気がします。なので、個人的にはロジックツリーやマインドマップの形式が好きですね。
この中で、特に見逃してはいけない、かつ頻度の多いものが、偽性血小板減少症と、薬剤性なので2つは青で強調しています。
また、他の血球の異常を伴う場合(特に汎血球減少症)はまた違ったロジックを作成するのが効率良いと思うので、別記事にしますね。
偽性血小板減少症
非常に重要な概念です。皆さんは、血算の採血管(紫のスピッツ)に何が添加されているかご存知ですか?少し考えてみてください。
正解は、「EDTA」です。これは血が固まらないようにしている抗凝固薬なのですが、血小板凝集を引き起こしてしまいます。この病態を疑ったときは、
凝固のスピッツ(黒スピッツ)
で血液採取し検査してもらいましょう!これにはヘパリン入っており血小板凝集を起こしにくいのです。
よくあるのは、今まで血小板減少なかった患者さんの採血で突然、「血小板7000/μl」何ていう数字が出たりします。病態も悪くなってないし、新規薬剤もないのになぜ????なぜだーーーーー!とパニックになる前に偽性血小板減少症を思い出してください。
薬剤誘発性血小板減少症~Drug Induced Thrombocytepenia:DITP~
さて、薬剤性と括ると更に2つに分ける必要があります。それは、ヘパリンが原因かそうではないかです。ヘパリンが原因の場合はヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、それ以外の場合は薬剤誘発性血小板減少症(DITP)、と呼びます。ここではDITPを中心に記載しますね。
簡単に言うと、薬剤による血小板減少です。原因は薬剤により血小板に対する抗体が誘発される機序と、それとは別の不明な機序で低下してしまうようです。この病態で重要なのは、DITPを疑うこと、と起こす頻度の高い薬剤を把握しておくことです。
というサイトにあらゆる被疑薬や食品が記載されています。是非参考にしてください。オクラホマの先生方が作成されており、血小板に関するデータや知見が詰まっていますので役立ちます。我々がよく使用する薬剤で多いのは、
- NSAIDs
- アセトアミノフェン
- ピペラシリン/タゾバクタム
- ST合剤
- レボフロキサシン
- リファンピシン
- リネゾリド
- バンコマイシン
- ダプトマイシン
- カルバマゼピン
- フェニトイン
- ヘパリン
- フロセミド
- ラニチジン etc……
きりがないのでこのくらいにしておいてやりましょう笑
1-3週間程度で多いとされていますが、半年後くらいに起こることもあるそうで、一つずつ止めて確かめるしかなさそうですね。一番最近から始めた薬剤から中止していくと整理しやすいと思います。
セッティングによる原因疾患の違い
例えば、外来で偶然に見つかった血小板減少と、入院中の患者さんの血小板減少では、そもそも検査前確率が違うので、それぞれどういう疾患が背景として多いのか知っておきましょう。
外来検査で¥偶然発見
- ITP
- 妊娠
- 薬剤性
入院患者で新規に発症した血小板減少
- DITP
- 感染症
- HIT
- 脾機能亢進症
- DIC
- TTP/HUS
- 血液腫瘍
- 栄養不足(葉酸、B12、銅)
といったところでしょうか。やはり特に症状なく偶然発見されるようなセッティングではITPは有力です。なぜなら血小板減少のみが所見なので、他に患者が困っていることがないからです。
PAIgG
血小板関連抗体のことで、ITPの殆どの症例で陽性となります。なので、陰性であればITPのではない可能性が高いです。
しかし、高値になるのはITPのみではなく、DITPや自己免疫性疾患などでも高値になりうるのです。なのでこれが高値でもなんとも言えないんですね。
よく、レジデントの先生方がPAIgG高値だ!ITPだ!となっていますが、ちゃんと上記マインドマップにある鑑別を丁寧に調べていきましょう。
幼若血小板分画比率~Immature Platelet Fraction、IPF%~
網状赤血球の血小板Verと考えてください。これが増えているということは、産生亢進を意味します。逆に、低値は産生低下を示します。
例えば、ITPでは末梢での血小板破壊が亢進して骨髄での産生が亢進するのでIPF%は上昇します。一方、再生不良性貧血では産生低下しているためIPF%は低下します。
造血幹細胞移植において、血小板が増加してきているかどうか一足はやく知って、血小板輸血を減らしたいという目的でよく研究されてきました。
さて、今回は少し長くなってしまいましたので、ここらへんにしておきましょう。少しは血小板減少へのアプローチが分かりましたでしょうか。皆さんの日常診療に役立てれれば幸いです。
Adios!
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