Dr.マクロの水痘帯状疱疹まとめ~危険なVZVを見抜け!~

Sponsored Links
Let`s Share:

Ola!皆さん、台風は大丈夫でしたでしょうか。関東甲信越を中心に甚大な被害をもたらしています。特に河川の氾濫には注意して、まだまだ気を抜かないようにしてください!「まあ大丈夫だろう」ではなく、「まだ危ないかもしれない!」と考え行動をお願いします。

さて、今回は水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster virus、以下VZV)についてです。小児に関してはDrほほえみにおまかせするとして、成人例でのアプローチとマネジメントをまとめます。特にERや内科外来に携わる医師、看護師の方々など危険な帯状疱疹を見抜くための知識を身に着けましょう!

水痘と帯状疱疹

水痘といえば、いわゆる水ぼうそうで子供の病気と考えがちですが、意外とそうでもないんです。なんとかVZV感染をかいくぐってきた成人が発症することもあります。

臨床で困るのは、水痘と汎発性帯状疱疹の違いです。正直治療は変わらないので、あまり目くじら立てて鑑別する必要はないのですが、以下の特徴があれば汎発性帯状疱疹らしいと考えられます。

  • ある領域の皮疹が特に強い
  • 皮疹の時相が均一(つまり新鮮な水疱と痂皮化した水疱が混じらない)

などです。どれも確定的ではないですが、帯状疱疹をより考える所見です。


広がりがありますが、左背側に一部特に集族が強い場所がありますね。これが汎発性帯状疱疹の特徴です。
Clinical Infectious Diseases, Volume 44, Issue Supplement_1, January 2007, Pages S1–S26, https://doi.org/10.1086/510206
The content of this slide may be subject to copyright: please see the slide notes for details.
Sponsored Links

注意すべき帯状疱疹(複雑性帯状疱疹:Complicated Zoster)

帯状疱疹は通常は、皮疹が限局しており後述の内服薬で難なく治療できます。しかし、ときに入院して点滴で治療を要する場合があります。それをしっかりと覚えておくことが臨床上ではひじょうに重要です。

  • 眼を含む病変(三叉神経第1枝領域)
  • 汎発性帯状疱疹
  • 中枢神経病変(髄膜脳炎)
  • 内蔵病変(肺臓炎など)

これらは、重篤になりうる(失明や、神経後遺症などを残す可能性)ので、入院適応です。アシクロビル点滴治療が必要となります。帯状疱疹だと思ったら、これらの徴候がないか必ず確認しましょう。

特に眼に関しては、急性網膜壊死なども引き起こしうります。眼も巻き込まれている場合は眼科に必ずコンサルトしましょう。忘れがちなので、絶対に忘れないでください。防ぎうる失明は、逃したらOUTです!

治療~症状の改善と帯状疱疹後神経痛のために~

治療の目的は、現在の皮疹をより早く治すこと、症状改善させること、感染を拡大させないことにありますが、もう一つ重要な理由として帯状疱疹後神経痛:Postherpetic Neuralgia(PHN)を予防するかもしれないということが挙げられます。

但しこれに関しては、1997年[1]と2009年[2]にMeta-Analysisが行われており、2009年のほうでは抗ウイルス療法がPHNを防ぐかどうかは不明であるとしています。理由としては、組み込まれた研究の疼痛スケールがバラバラであり評価が一定しないことやアシクロビル以外のファムシクロビルやバラシクロビルなどでの研究が少ないことが原因のようですね。

治療対象、つまり抗ウイルス療法を行うことでメリットがあるのは

  • 50歳以上
  • 免疫抑制状態
  • 汎発性帯状疱疹や、皮疹が重症の場合

などです。おそらく内科医が診るのは、ほとんどが50歳以上の患者さんなのでほとんどが治療対象となります。

治療は、抗ウイルス療法です。以下の4剤が使用可能です。

  • アシクロビル:内服も点滴もあり
  • バラシクロビル:アシクロビルのプロドラッグ
  • ファムシクロビル:ペンシクロビルのプロドラッグ
  • アメナメビル:新規治療薬で、ヘリカーゼ/プライマーぜ複合体阻害薬

上3つが、核酸類似体でこれがウイルスのDNA合成の際に入り込むことでそれ以上の合成増殖を抑制します。一方、アメナメビルは久々に登場した新規作用機序の抗ヘルペス薬で、ウイルスDNAをほどく役目のヘリカーゼ/プライマーゼ複合体を阻害することでウイルス増殖を抑制します。機序が全く異なるため、交叉耐性がないなどの期待が持たれます。また腎機能調節不要、1日1回でよい、など既存の治療薬の弱いところを尽く克服してくれています。ただしまだ使用経験が浅いことや、免疫正常者に対するバラシクロビルへの非劣勢が示されている以外の効果は不明、など課題も残ります[3]。

治療における注意点をまとめます。

  • 72時間以内に治療開始すること(治療によるメリットは72時間以内の治療開始が条件)
  • 72時間以上経過していても、新規の皮疹出現や免疫抑制状態の患者では治療を考慮
  • 内服薬ならば、バラシクロビルかファムシクロビルのほぼ2択(アシクロビルは1日5回内服とアドヒアランスが悪い。。。)
  • 妊婦の場合は、積極的に治療が必要で、アシクロビルが推奨(妊婦での研究はアシクロビルの研究がほとんどであるため)
  • 治療期間は7日間 *免疫抑制患者や重症な皮疹患者は更に長い場合もあり

バラシクロビルとファムシクロビルは、いずれもアシクロビル内服よりも疼痛改善の程度や速さが早いことが複数の研究で認められています[4, 5, 6]。

鎮痛も急性期において非常に重要です。なんといっても、非常に疼痛が強く大変患者さんのQOLを下げるからです。急性期には、PHNの治療薬であるガバペンチンやプレガバリン、3環系抗うつ薬は推奨されません。PHNを予防する効果がなく、かつ副作用が増えるのみという結論です。なので、

  • アセトアミノフェン
  • NSAIDs
  • オピオイド

などを使用します。え?!オピオイド?!なんて思うかもしれませんが、そのくらい疼痛が強くなる患者さんもいらっしゃるので有害事象にはくれぐれも注意して使用する場合もあります。

また元来用いられていた、糖質コルチコイドの併用もMeta解析で効果は少なく、二次性細菌感染症の増加を招くとされています[7]。Ramsay-Hunt症候群でのステロイド併用も効果は不明です。

予後

以下の2つの数字を頭に入れておきましょう。

  • 入院した帯状疱疹患者の30日死亡率:約3%[8]
  • 再発率:約6%[9]

さて、今回はここまでです。ワクチンとPHNに関しては、次回やりますのでご期待ください!

Adios!

引用文献

  1. Jackson JL et al. Arch Intern Med. 1997 Apr 28;157(8):909-12.
  2. Li Q et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Apr 15;(2)
  3. Makoto Kawashima, et al. J Dermatol 2017 Nov.
  4. McDonald EM, et al. Antivir Ther. 2012;17(2):255-64.
  5. Beutner KR, et al. Antimicrob Agents Chemother. 1995 Jul;39(7):1546-53.
  6. Tyring SK, et al. Arch Fam Med. 2000 Sep-Oct;9(9):863-9.
  7. He L, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jan 23;(1):CD005582. 
  8. Schmidt SA,et al. BMC Infectious Diseases 2016 Mar 01; Vol. 16, pp. 99.
  9. Yawn BP, et al. Mayo Clin Proc. 2011 Feb;86(2):88-93.

良いReview

  • Clin Infect Dis. 2007 Jan 1 2007
  • N Engl J Med 2013 Jul 18;369(3):255 2013
  • Ann Intern Med 2018 Aug 7;169(3) 2018
Let`s Share:
Sponsored Links

コメント

タイトルとURLをコピーしました